さて、管理組合の本来の役割は組合員の共有資産である、マンションの共用部分を適正に管理することである。管理費はそのために支出されるべきであろう。ところが、国土交通省の定める標準管理規約の第27条10項には、管理費の支出項目について以下のような規定がある。
〈地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用〉
平たく言うと、管理費予算から地域の自治会の会費を払っていいということ。また、この項目を拡大解釈すると、理事の飲み会の費用まで管理費予算から支出できる、とも読み取れる。
現実的に、多くの管理組合で理事たちの宴会費用に管理費予算が支出されている。これを是とするか否とするかは意見の分かれるところだ。管理組合によっては、居住者の親睦を図るために様々なイベントを行っていたりする。
私が過去に取材したある管理組合は、1年に1度「カレー大会」を開いていた。敷地内のガーデンでお米を焚いて、レトルトのカレーを住民に振る舞う。その目的は、居住者の親睦も兼ねているが、主には災害用備蓄食料の更新や炊き出しの訓練を兼ねているそうである。こういうことなら、大いにやるべきだろう。
また、区分所有者や居住者の親睦を図るために、様々なイベントを行っている管理組合は多い。敷地に余裕があるマンションなら、屋台が出る夏祭りや盆踊り大会を開催しているのをよく見かける。中にはサークル活動としてお料理教室や子どもたちのイベントなどもよくあるケースだ。
かつて、ある管理組合ではマンションの好感度を高めるために、居住者が参加する「恋するフォーチュンクッキー」の動画を撮って、オフィシャルページで公開した。著作権料の支払いが生ずるはずである。これは、ちょっと悪乗りが過ぎる。
これらのイベントが健全なスタイルで運営されるなら問題はない。健全かそうでないかをどこで見分けるかというと、費用分担の公平さだろう。
イベントには一部の人しか参加しない。あるいは、管理費を負担していない賃貸居住者が参加するスタイルだったりする。だから、参加しない人が払っている管理費からは、不要な支出がないようにイベントのスキームを組むべきだ。そうでない場合は、不公平感が生じる。