一方、フルオーダーとは、まったく基準となる商品はなく、体の各部位を測定し、それに合わせて型紙を一から起こします。型紙を一から起こすというのは非常に高等な技術が必要ですので、フルオーダーの価格は高く、最低でも20万~30万円くらいはします。
そして、フルオーダーとパターンオーダーの中間的存在として「イージーオーダー」があります。これは自分と似た体型の人の型紙を利用し、それをサイズに合わせて微修正するというオーダースーツで、価格的にもフルオーダーより安く、パターンオーダーよりも高くなります。最低価格は10万円くらいが相場でしょうか。
ZOZOに先駆けて、低価格パターンオーダーを展開していた企業やブランドは数多くあります。
例えば、青山商事は自社ブランド「ユニバーサルランゲージ」で4万円くらいのパターンオーダーを何年も前から手掛けていますし、麻布テーラーも10年以上前から4万円弱でパターンオーダーを展開しています。
また、「ザ・スーパースーツストア」を展開し
ていたオンリーも3万円台のパターンオーダーをやっていますし、最近店舗数を増やしてきた「グローバルスタイル」でも3万円台のパターンオーダースーツが販売されています。コナカも「ディファレント」という屋号でパターンオーダースーツ店を展開しています。2万~4万円くらいのパターンオーダースーツというのはそんなに珍しい物ではないのです。ではどうして、これらのスーツ販売大手各社が低価格パターンオーダースーツを10年以上前からそろって開始したのでしょうか。それは2007年から始まる団塊世代の定年退職によるスーツ需要の激減に備えた施策だったのです。
メンズスーツのもっとも需要の多い層が団塊世代でした。しかし、いくら人口が多い世代だと言ってもいずれは定年退職の時期を迎えます。そうなるとメンズスーツ需要人口は激減してしまいます。そのため、スーツ販売大手各社は、主に4つの施策を取ることでスーツ需要の激減を緩和しようとしました。
(1)レディースビジネススーツの強化
(2)カジュアルウェアの取り扱い強化
(3)低価格パターンオーダースーツの導入
(4)異分野への進出
青山、AOKI、はるやま、コナカなどの大手各社の店内は4割くらいをすでにレディースビジネススーツとブラウスが占めています。これが(1)の施策の結果です。(2)は青山商事がリーバイスストアのフランチャイズ運営やアメリカンイーグルアウトフィッターズの展開を開始したこと、また、はるやまがストララッジョ、イーブス、テットオム、トランスコンチネンツなどのカジュアルブランドを次々と買収したことが代表例といえます。(4)はAOKIがカラオケ店や結婚式場を運営していることが実例です。