僕自身も、1990年代はヘアヌード写真集をたくさん買いましたよ。それまでもヌードになる芸能人はたくさんいました。しかし、ヘアヌードは売れていない人やピークを過ぎた人というイメージをひっくり返したのです。
90年代、社会現象になった「ヘアヌード」は、人気が上り坂の女性有名人が脱いでいたから衝撃が大きかった。僕は心では「脱いじゃダメ」って思いながら、発売を知らせる新聞広告を見て予約していました。そして、写真集を開くと「そこまでえげつなくなかったよね」とガッカリするとともに、ホッとしていたんです。
この写真集はそれまでのアートに重きを置いたヘアヌード写真集と違い、カメラマンと菅野美穂の距離感の近さを嫉妬させるほど生々しく感じさせます。ヘアヌードのこうした写真集は、これが最初かもしれません。
◆日本社会を大人にした
「ヘアヌード」という言葉は、今は死語になりつつあります。なぜ90年代は流行語であったかというと、ヘアヌードは、戦後日本の裸の歴史において、一時代を画するものだったからです。
西洋絵画における印象派が、当時の絵画のルールを変えたように、ヘアヌードは日本が「アートとはなんだろう?」と考えるきっかけになりました。