ライフ

人はなぜ「ストーリー化」された情報を求めるのか

事実だけを列挙した情報は味気なく、頭に入りにくい

 人間社会では、大昔から、さまざまな情報の伝達が行われてきた。ただし、情報は、そのまま示すだけでは断片的なものとなり、なかなか人々の頭に入ってこない。そこで、ある工夫をすると、人々が受け入れやすく、記憶に残る情報となる。「ストーリー化」するのである。ニッセイ基礎研究所上席研究員の篠原拓也氏が、ストーリー化された情報の受け取り方や注意点について解説する。

 * * *
 イギリスのE.M.フォースターという小説家は、どういう文が人々に受け入れられやすいかという実験をした。その中で、人々につぎの2つの文を見せて、どちらのほうが理解しやすいかを尋ねた。

(a)国王が逝去し、そして、王妃が逝去した。
(b)国王が逝去し、そして悲嘆のため、王妃が逝去した。

 多くの人が、(b)の方が受け入れやすいと答えた。(a)の文は、2人の死を列挙したに過ぎない。一方、(b)の文は、2人の死の間に「悲嘆のため」という因果関係をつけて、2人の死をつなげている。つまり、ストーリー化している。

 実は、コンピューターなどで扱う情報理論では、(a)の方が(b)よりシンプルで好ましいとされるようだ。(b)に出てくる「悲嘆のため」という部分は、何か証拠が示されない限り、単なる書き手の推測に過ぎず、事実かどうかが判断できないためだ。

 しかし、人間の脳は、そのようにはできていない。脳は、事実の羅列ではなく、ストーリーを求めるのだ。

 淡々と、事実だけを列挙した情報というのは味気ない。なかなか頭に入ってこない上に、記憶に残ることも少ない。人々の記憶に残るためには、ストーリー化が必要となる。企業が発する様々な宣伝はもちろん、メディアが出すニュースも、多くはストーリー化されたものとみるべきだろう。事実の列挙とストーリー化された宣伝文句では、読み手への訴求力が大きく異なると考えられるからだ。

 次の例は、筆者が作った健康食品の架空の宣伝文句だ。

関連記事

トピックス

伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
総理といえど有力な対立候補が立てば大きく票を減らしそうな状況(時事通信フォト)
【闇パーティー疑惑に説明ゼロ】岸田文雄・首相、選挙地盤は強固でも“有力対立候補が立てば大きく票を減らしそう”な状況
週刊ポスト
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン