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2018.08.23 16:00  マネーポストWEB

「墓じまい」の事件簿 寺が墓石撤去を妨害するケースも

「墓じまい」のトラブルは後を絶たない


 菩提寺が遠方の郷里にある場合、ついつい足が遠のいてしまう墓参り。自宅近くに墓があれば……と改葬を望む人が急増しているが、いざ田舎の墓じまいを決断しても、当事者に数多の難題が降りかかることは知られていない。

◆寺が墓石撤去を妨害

 このお盆休み、実家の長野県松本市まで墓参りに行った都内在住のA氏(65)は、疲れ果てた表情でこう話す。

「妻も60代で、体力的に遠方の墓参りは厳しい。今年を最後に両親の墓を処分して、都内の共同墓地にでも移そうと思っていたのですが、住職に相談したところ、ご立腹でして……。『檀家でなくなるのなら“離檀料”を80万円払ってください』と言われて、途方に暮れています」

 墓を畳む「墓じまい」が急増している。厚生労働省によると、2016年度の墓じまいは約9万7000件。5年前から2万件増え、統計開始の1996年以来過去最高を記録した。だが、そんなブームの中で、A氏のようにトラブルに巻き込まれる事例が続出しているという。

 墓じまいとは、以下の手順で行なわれる“お墓の引っ越し”である。

【1】新たな安置先から「受入証明書」をもらう。
【2】菩提寺から「埋葬証明書」をもらう。
【3】菩提寺のある自治体に【1】と【2】を提出して改葬許可証をもらう。
【4】菩提寺で「御霊抜き」の供養後、墓を撤去し、遺骨を新たな安置先に納骨する。

 この過程で一番揉めやすいのは、【2】の際に菩提寺に支払う離檀料(檀家を離れる時にこれまでの謝礼として支払うお金)だ。

 お墓の事情に詳しい東洋大学ライフデザイン学部非常勤講師(エンディングデザイン研究所代表)の井上治代氏が語る。

「金額は10万~20万円程度が多いのですが、中には数百万円以上を請求してくるお寺もある。お墓の購入時にそうした“契約解除”に関する取り決めが交わされることは少ないですが、寺院境内墓地を契約することが檀家になる意思表示なので、お墓を移すと離檀料を求められるケースが多い。菩提寺が埋葬許可証を出してくれないと墓じまいができないので、強く出られない檀家さんが多いのが現実です」

 支払いを拒否したケースもある。ある寺院関係者が語る。

「北陸のある寺で、墓じまいの際に離檀料を100万円要求され、怒った檀家が弁護士を立てた。結局、法廷闘争直前で寺側が折れて、10万円に“大幅値下げ”されたのですが、この手のトラブルは枚挙にいとまがない」

 逆に寺側が墓じまいの意向を拒否して“強行手段”に出るケースも。

「ある檀家が北関東の山奥の寺から都内の納骨堂に墓を移そうとしたところ、“顧客の流出”を阻止したい住職が、墓地の入り口に『車両通行禁止』の看板を立てて撤去業者が入れないようにしたことがありました。最終的には双方が話し合いを重ねて解決しましたが、墓地の管理は寺が行なっているだけに、檀家は抵抗しようがない」(前出・寺院関係者)

 墓石撤去の際、作業を請け負う石材店から高額の請求を受ける事例も増えているという。

 相場は1平方メートルあたり5万~15万円というが、重機が入れない場所にある墓の場合、値段が跳ね上がる。3年前、山梨県の実家の菩提寺で墓じまいをしたB氏(58)が語る。

「通路が狭すぎて全て手作業になりました。その場で石を切断して搬送するのですが、通路や階段に足場を組んだりと作業が煩雑になり、請求額は50万円。正直、こんなにかかるならやらなきゃ良かった……と後悔しました」

 墓じまいを巡る最大の“火種”は親族内にもある。葬儀・お墓コンサルタントの吉川美津子氏が語る。

「年配の方の中には、『代々のお墓を移す』ということ自体に抵抗がある人が多いんです。改葬後に共同墓地に合葬されることへの拒否反応もある。そのため、親族から猛反対を受けることが多く、墓じまいを巡って深刻な家庭内トラブルに発展してしまうケースもあります」

※週刊ポスト2018年8月31日号

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