その後、ぼくは6月のある一週間を「東北応援週間」と勝手に決めて、被災地を訪ねた。4つの高校で、「教科書にない一回だけの命の授業」をしたり、南三陸や気仙沼大島にボランティアで元気づけの講演を行なったりした。
その合間を縫って、「風の電話」まで足を延ばした。同行者は、陸前高田や南三陸に住む医療介護の専門職の人たちで、津波で夫を亡くした看護師もいる。彼らが交代で車を運転してくれたのだ。
現地に着き、驚いた。「ベルガーディア鯨山」と名付けられたプライベートガーデンの、実に広大で、美しいこと!
大きな石を組み上げたロックガーデン、季節の草花が咲くハーブガーデン、ローズガーデン、コニファーガーデン……。「風の電話」はほんの一部で、その周りに豊かで居心地のいい世界が広がっていたのだ。
2012年に完成した「森の図書館」は、数年がかりで石を積み上げてつくった。絵本のなかにある世界観を、そのまま実現したような雰囲気である。
こうした美しい建物とガーデンを、佐々木さんがほぼ一人でつくったと聞き、さらに驚いた。美しい石組みを見ながら、どうやって一人で積み上げたのか、佐々木さんの考える力とそれを実践する力に感嘆するしかなかった。
それにしても、なぜ、佐々木さんはこんな広大なガーデンをつくろうと思ったのだろうか。