彼は中学卒業後、釜石の製鉄会社で働いてきた。しかし、昭和の終わりごろ、鉄の産業が斜陽に。佐々木さんも、会社が新規事業として始めた食品関係の会社へと派遣させられた。

 おもしろいのは、食品会社で魚屋から包丁の扱い方を教えてもらい、マスターしたところだ。食品会社の経営に、包丁さばきは必要ないのだろうが、そこは佐々木さん、自分の手を動かして形にすることを通して、モノゴトの本質を理解するところがある。地頭がいい人だ、と感じた。

 彼は、社員440人のリーダーを務め、年商20億円の事業に仕上げていく。製鉄会社の新規事業は難しいと聞くが、珍しく黒字に転ずることができたという。そんな佐々木さんだが、51歳のとき会社に執着することなく、早期退職する。会社の人間関係でおもしろくないことがあったようだ。

 その3年後、1000坪の山林を買う。隣の土地も買ってほしいと言われ、さらに1000坪買い足した。その広大な山林を切り拓き、都会で暮らす息子や孫たちが帰ってくることができる「地図にない田舎づくり」を始めた。

 人はいったい何歳くらいから、次世代のことを意識しはじめるものだろうか。子どもや孫たちの世代に何を遺すべきか。そのために、自分は何をすべきだろうか。そうした自問は、己の価値観や倫理観を突き詰めなければ見えてこない。体力や経済的なことを考えると、佐々木さんのように50代という人はきっと多いだろう。

関連記事

トピックス

STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
水原一平容疑者は現在どこにいるのだろうか(時事通信フォト)
大谷翔平に“口裏合わせ”懇願で水原一平容疑者への同情論は消滅 それでもくすぶるネットの「大谷批判」の根拠
NEWSポストセブン
大久保佳代子 都内一等地に1億5000万円近くのマンション購入、同居相手は誰か 本人は「50才になってからモテてる」と実感
大久保佳代子 都内一等地に1億5000万円近くのマンション購入、同居相手は誰か 本人は「50才になってからモテてる」と実感
女性セブン
宗田理先生
《『ぼくらの七日間戦争』宗田理さん95歳死去》10日前、最期のインタビューで語っていたこと「戦争反対」の信念
NEWSポストセブン
焼損遺体遺棄を受けて、栃木県警の捜査一課が捜査を進めている
「両手には結束バンド、顔には粘着テープが……」「電波も届かない山奥」栃木県・全身焼損死体遺棄 第一発見者は「マネキンのようなものが燃えている」
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
ムキムキボディを披露した藤澤五月(Xより)
《ムキムキ筋肉美に思わぬ誤算》グラビア依頼殺到のロコ・ソラーレ藤澤五月選手「すべてお断り」の決断背景
NEWSポストセブン
(写真/時事通信フォト)
大谷翔平はプライベートな通信記録まで捜査当局に調べられたか 水原一平容疑者の“あまりにも罪深い”裏切り行為
NEWSポストセブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン
大谷翔平を待ち受ける試練(Getty Images)
【全文公開】大谷翔平、ハワイで計画する25億円リゾート別荘は“規格外” 不動産売買を目的とした会社「デコピン社」の役員欄には真美子さんの名前なし
女性セブン
眞子さんと小室氏の今後は(写真は3月、22時を回る頃の2人)
小室圭さん・眞子さん夫妻、新居は“1LDK・40平米”の慎ましさ かつて暮らした秋篠宮邸との激しいギャップ「周囲に相談して決めたとは思えない」の声
女性セブン
いなば食品の社長(時事通信フォト)
いなば食品の入社辞退者が明かした「お詫びの品」はツナ缶 会社は「ボロ家ハラスメント」報道に反論 “給料3万減った”は「事実誤認」 
NEWSポストセブン