同じ日には同派最高幹部の吉田博美・参院幹事長が「(石破氏の安倍首相への)個人攻撃は非常に嫌悪感がある」と露骨に非難してみせた。石破陣営の切り崩しが始まったのだ。
安倍首相は議員の造反と党員票を不安視している。安倍支持を決めた派閥の中には、お友達優遇人事でいつまで経っても大臣になれない不満組の議員がかなりの人数にのぼる。総裁選の投票は無記名で行なわれるため、本番では思わぬ数の造反票が出る可能性がある。そうなれば首相は総裁選後に党内に一定の「反安倍勢力」を抱えることになり、いつ足をすくわれるかわからない。
そこで安倍陣営は面従腹背の造反者をあぶり出す準備をしている。
「総裁選の党員票は各県連ごとに開票するから、どの議員の選挙区に住む党員が石破氏に多く入れたかわかる。たとえ本人が安倍総理に投票したと言っても、地元から大量に石破票が出ていれば党員票集めをサボっていたのは明らかで、造反と見なされる」(細田派議員)
党員票での圧勝も至上命題だ。前回、石破氏と争った2012年の総裁選で党員票で完敗した安倍首相は、今回こそ党員票でも圧倒して見せなければ示しがつかない。そこで自民党執行部(総裁選挙管理委員会)は土壇場になって党員投票のルールを“安倍有利”に変更した。
党則では、総裁選の投票資格があるのは党費を連続2年納めた党員約90万人だが、今回は「18歳以上、20歳未満の党員にも選挙権を与えるため」という口実で特例として入党1年目(党費納付1回)の党員約16万人全員に投票権を与えることを決めた。