一方で、団体の活動を知った教員たちからは不安の声が上がる。
「学校では教えていない用語を一部の児童が知り、“知らないほうがおかしい”と学校で言い出したら混乱が起きるのではないか」(都内の小学校教諭)
◆「性的接触」の教え方
こうした性教育事業が生まれる背景に、性教育を担う存在である学校の現場が硬直化している状況がある。日本の性教育の歴史を研究している女子栄養大学非常勤講師の茂木輝順氏が語る。
「日本の性教育は何度かの“ブーム”とそれに対する“大きな揺り戻し”を経て、今に到ります。1980年代後半、HIVの感染拡大を背景に性教育ブームは空前の盛り上がりを見せ、のちに“性教育元年”と呼ばれる1992年を迎えます。小学校でも保健の教科書が導入され、『ペニス』『ワギナ』という用語が載りました」
ところが、ブームを背景に教育内容が徐々に過激化し、2002年に厚労省の外郭団体が作成し、全国の公立中学校に配られた性教育副読本『思春期のためのラブ&ボディBOOK』で世論が一変する。セックスの体位やコンドーム、ピルの使い方まで記載されていたため保護者から批判が相次ぎ、絶版・回収騒ぎに発展した。