発表会は、そんな親子の汗と涙の結晶でもある。落語教室のメンバーが披露したのは昨年と同じく『七度狐』だ。

 喜六と清八という大阪の若い男2人がお伊勢参りをしようと歩き出すが、お腹が空いたので煮売屋に立ち寄り、イカの木の芽和えをすり鉢ごと盗んだ。中身を食べ終え、すり鉢を草むらに捨てたところ、狐の頭に当たった。この狐が一度ひどい目に遭うと、七度だまし返すという七度狐だったから、さぁ大変―狐が2人をだます場面が見どころで、この1時間以上ある長い噺を今年は8人がつないだ。

 浴衣に白足袋。右手には扇子を持って、トップバッターの浅岡将太君が登場。舞台中央の座布団に正座をして、見台と呼ばれる小さな台の上に扇子を置き、お辞儀をすると、大きな拍手が起きた。

「しかし清ぇやん、腹が減ったな。腹が減った~。腹が減った~」
「大きな声で腹が減った~、てなこと言いないな、大阪モンが」
「そぉかて、腹が減ったら、腹が減ったと言わなしょうがないがな」

 顔を上下に振りながら話し始めると、会場からはクスクスと笑いが起きる。

 小拍子(場面を切り替えるときに見台を叩く道具)を叩きながら、話していく。担当パートが終わると、「さて、この後どうなるんでしょうか?」「では、お次へと替わります」と言いながら交代。今度は太鼓や鉦などを叩いて他のメンバーの話を盛り上げる。

 だました狐を追い詰め、狐の尻尾を引っこ抜いたと思ったら、畑の大根だったというオチがついてリレー落語『七度狐』は無事に終了。本番を終え、「緊張したけど、笑ってもらえてよかった」と口々に話す子供たち。中には「1か所、間違えたけど、うまく引っ張った」と話す子もいて、どの子の顔にもやり遂げたという自信が満ち溢れていた。

 6番目に登場した小学3年生の中路佳恋ちゃんは、兄の影響を受け、落語教室に参加したという。

「去年、5年生だったお兄ちゃんが落語をしているのを見ていて、楽しそうだと思いました。3年生になったら絶対、落語をやろうって決めていました」(佳恋ちゃん)

「家で練習しているのは見ていました。うまくできるか心配でしたが、今日の本番がいちばん上手だったと思います。自信につながったんでしょうね、これからも落語を続けたいと言われました」と母親の佳織さん(44才)もホッとした表情を浮かべた。

◆この子にとって落語は一生の宝物

 この日、ちーと君をはじめ「宝塚こども落語くらぶ」に所属する16人は1席ずつ落語を披露した。玄人はだしの『崇徳院』を披露した中学2年生の嶋名雅照君は、小学4年生の時に募集チラシを見て参加したのがきっかけ。

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