ライフ

親子が泣き笑う「こども寄席」 子供たちを変えた落語の効能

師匠・林家染左さん(左)と「宝塚こども落語くらぶ」の子供たち

 ♪お多福来い来い、お多福来い来い、ステツクテンテン、ステツクテンテン──間もなく寄席が開演することを知らせる二番太鼓は、来場した観客のご多幸を願って、こんなふうに聞こえるようリズミカルに鳴らされる。「こども寄席」で鳴り響いたそれは、子供たちが無事に稽古の成果が出せますようにと祈る音色にも聞こえた。が、不安顔で見守る親御さんたちの姿をよそに、子供たちは心底、落語を楽しんでいた。

 * * *
「何よりもまず疲れました」

 大勢の観客を前に、古典落語の演目『貧乏神』をやり終えた感想を語ったのは小学5年生のちーと君。漫画家・細川貂々さんの息子、千歳君だ。貂々さんの描いた落語コミックエッセイ『お多福来い来い』には、ちーと君が落語を始めるきっかけが描かれている。

 ちーと君が学校からもらってきた「宝塚こども落語教室参加者募集」のチラシを見た貂々さんが、落語教室に興味があるかを聞くと、「ヤダ。興味ない」とつれないひと言。しかし、父・ツレさんが、

「ハハは今、『女性セブン』で落語マンガの連載をしているのだ。ハハの仕事のためだと思って行ってあげなさい」

 と諭すと、「そーゆーことならいいよ」と、落語教室に通い始めた。そして昨年の夏の「こども寄席」発表会で教室の仲間とリレー形式で『七度狐』を披露してから丸1年。すっかり落語にハマって、今年は教室の卒業した子たちが有志で作った「宝塚こども落語くらぶ」の一員として、見事ひとりで高座に上がった。

 この「宝塚こども落語教室」は、「子供たちに伝統芸能に親しんでもらう機会を作ろう」というコンセプトのもと、2007年から兵庫県の宝塚市文化財団が始めたもの。小学3年生から中学3年生までが対象で、夏休み期間中の1か月、全7回のプログラムで最終日に発表会が催される。

 講師を務める落語家・林家染左さんはこう語る。

「今年で12年を迎えましたが、通算100人以上の子たちが参加してくれました。上の子たちはもう社会人ですが、誰ひとりとして足を踏み外さず、落語家にはなっていません。私たちを反面教師にしてくれたんでしょうね(笑い)。

 ほぼ1か月の間に落語もやり、太鼓や銅鑼などの鳴り物も覚えてもらいます。落語をどれだけ楽しく思ってもらえるかがいちばんで、私たちは怒ったりはしませんけど、毎年、子供たちの家では『こんなことで間に合うんか』とか『全然覚えてないやん』とか、いろんなバトルがあるみたいですねぇ(苦笑)」

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン