その船は約800人を収容可能で、東日本大震災でも避難所として利用された実績がある。シャワーやベッドが完備され、避難所での精神的負担となるプライバシーも確保できる。
「船を所有している会社の経営者は篤志家で、“3か月間は、無償で提供する”と。7月24日にバス2台をチャーターして被災者による客船の見学会も行なわれました。実際に見学した人は、“これでお風呂にも入れるし、ゆっくり寝られる”と大喜びしていました。
しかし、市に提案しても、待てど暮らせど返事が来ない。8月中旬になってやっと返事があったと思ったら、“市長とも相談したが、現在は人手が足りなく、臨時避難所を拡大する方針にない”というものだった」(同前)
発案者の1人で、客船の見学にも同行した塩津学・倉敷市議は、困惑した表情でこう説明した。
「決裁しないという市長の判断は甚だ疑問です。何より、被災者の期待も大きかった分、それを裏切る結果となってしまって申し訳ない。被災者にどう説明したらいいのか…」
船を所有する会社の担当者は、「市長を説得できなかったと聞いています。残念です」と語る。伊東市長に質問状を送ったが、期限までに回答はなかった。地域が一丸となって取り組むべき復興に、思わぬかたちでヒビが入っている。
※週刊ポスト2018年9月21・28日号