国内

もはや「殺人塀」と呼ぶべきか、改修先送りしたブロック塀は

ひび割れたブロック塀が野放しに(写真提供/エコ.グリーン設計)

 想像してほしい。普段歩く道沿いにあるブロック塀が突然倒壊し、あなたや、あなたの大事な人に襲いかかってくるところを──。それがどれだけ恐ろしく、危ないか。私たちはそんな凶器に囲まれて生活していることに、あまりにも無頓着ではなかったか。来たる大地震に負けず、命を守るために今すぐやるべきことがある。やらなければいけないことがある。

 ある住宅街で、2m以上あるひび割れたブロック塀を見上げながら、山本由美さん(仮名・39才)は不安げな表情を浮かべた。

「あの地震以来、いつこの塀が倒れるか、心配でたまりません。ここは子供がよく通る道なので、思い切って持ち主のかたに改修するようにお願いしたのですが、“東日本大震災でも倒れなかったから大丈夫”の一点張りで…」

“あの地震”とは、6月18日に、最大震度6弱を記録した大阪北部地震のこと。高槻市立寿栄小学校に通っていた小学4年生の女児を圧死させたのは、建築基準法に違反したブロック塀だった。高さ3.5mのうち、コンクリートのブロック8段で組まれた1.6mの上段部分が、約40mにわたって通路側に倒れている映像は、日本中に大きな衝撃を与えた。

 大阪府警はブロック塀の安全管理に問題がなかったか、業務上過失致死容疑を視野に入れて捜査を始めた。それから3か月近く経過したが、果たして結論は出たのか。高槻警察署に尋ねると、「まだ捜査一課が捜査中で、それ以上のことは言えません」(広報担当)とのこと。事件はまだ何ひとつ終わっていないのだ。

◆学校は数が限られているけれど、住宅の塀は…

 文部科学省はブロック塀による事件を受けて、すぐさま全国の学校施設で安全点検を行い、注意喚起を含めてブロック塀の安全対策を実施した(8月10日に調査結果を発表)が、危ないブロック塀は学校施設にだけ存在しているのではない。本誌・女性セブンが「このブロック塀が危ない!」(8月9日号)とのタイトルで、そうした調査・点検の対象は公共施設だけでいいのかと警鐘を鳴らしたところ、大きな反響があった。

 当該号の発売された7月26日段階では、国土交通省は危険なブロック塀に対して啓蒙活動や相談窓口を増やすなどといった回答で、具体策が見えてこなかった。それが一転、8月3日、自治体が指定する避難路沿いのブロック塀の所有者に対し、耐震診断の義務化を検討する方針を明らかにした。

 しかし、避難路が広く情報共有されていない中、果たして耐震診断を義務化するのは避難路沿いだけでいいのか。もっと広範なブロック塀を対象にする必要があるのではないか。本誌記者が国土交通省住宅局建築指導課の担当者に尋ねると──。

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン