心臓性の突然死で亡くなる人の数は、日本全国で毎年約10万人いると推計されている。思いがけない発作のトリガー(引き金)となるのが不整脈だという。心臓血管研究所所長の山下武志医師が指摘する。
「不整脈は、およそ20種類に分類されます。そのうち、命にかかわる『キラー不整脈』は2種類あり、ともに『心臓』の働きと大きく関係しています」
そのひとつが「心室細動」だ。心臓は4つの部屋に分かれており、上部に位置する2部屋が「心房」、下部の2部屋が「心室」だ。
「心房」は、全身の血管を通って心臓に戻ってきた血液を「心室」に送り出し、「心室」は血液を全身に送り出す役割を担う。この心室の筋肉が細かく震える症状が心室細動である。
「心臓の筋肉が痙攣するように震え、収縮と拡張を正確に繰り返せなくなるため、血液を全身に送り出す“ポンプ”の役割を正常に果たせなくなる。その結果、心停止状態になって突然死に至ります。重症化のスピードが極めて早く、発症から数秒で意識を失い、1分経過するごとに生存率が10%ずつ減少する。発症から10分以上が経過すると、助かる見込みが限りなく低くなります」(山下医師)
山下医師によれば、風呂場で亡くなる人や、電車になんとか間に合うべく階段を駆け上がり、電車に飛び乗ってその直後に亡くなる人のようなケースは、「心室細動」による突然死だと考えられるという。