ドンチョル氏の現実主義と野心は、番組の演出だけではおさまりませんでした。2017年早々、彼はMnetを辞職し、BIG BANGやBLACK PINKなどを擁する大手プロダクションYG ENTERTAINMENTに移籍してしまいます。
続く「プデュ」第二シリーズには、ドンチョル氏門下のアン・ジュニョン氏がプロデューサーに就任。「悪魔の編集はなくす。私の名前をかけて約束する」と明言しました。
ボーイズグループ結成を目指す「プデュ」の第二シーズンがまずまずの成功をおさめたのち、「プデュ」第三シーズンとして『PRODUCE48』が始動します。ファンの顰蹙を買う“悪魔の編集”による批判を避けた、二代目プロデューサーのジュニョン氏が新シリーズのために編み出したのは、AKB48グループからのメンバー派遣という“悪魔の選択”でした。
日韓のアイドルの性質の違いからいって、基礎的な踊りや歌の実力では韓国の練習生に一日の長があります。「実力差」のコントラストに加え、言語ギャップもある。差を埋めようと必死になるAKBメンバーの奮闘ぶりを取り上げれば、“悪魔の編集”に頼らなくても、自然とドラマが生まれる。この着想は、最初のクラス分けテストでダンスも歌もダメと軒並み低評価を下され青ざめた、AKBメンバーの様子をクローズアップすることで実現しました。
そういった“物語”が生まれた効果なのか、「テレビ話題性指数分析」で『PRODUCE48』は上位ランクインする大きな反響があったといいます。ところがこれは、野次馬的な興味に偏っていたようで、視聴率は第11回まで視聴率3%を突破出来ず、メンバー発表の舞台を中継した最終回も3.1%というプデュシリーズでは最低の結果となりました。
これは不当な数字でしょうか? いえ、正直、私の目から見ても意外ではありません。悪魔の編集を放棄したとはいえ、せめて“PDピック”が正常に機能していれば、結果は違ったかもしれません。しかし、あまりにポリシーの感じられないピックアップが脈絡なく繰り返されたため、今シリーズは最後まで誰がヒロインなのか分からない“残念なプデュ”となってしまいました。その結果、投票による結果はかなり偏った内容だったと断言してしまってもいいと思います。何人かの実力派練習生は、露骨な「ウィスプル排除」の煽りで脱落し、結局、ルックスの良さや、目立ったエピソードをフィーチュアされた“幸運な”メンバーに投票が集中してしまったように思います。素直に参加者の誰かに感情移入してファンになっていく、サバイバルオーディション番組としての面白味は、最終回まで発揮されず仕舞いだったのは非常に残念なことでした。
何度も引き合いに出してなんですが、『SIXTEEN』というオーディション番組からセレクションされたTWICEのメンバーは、審査員であるJYP社長パク・ジニョン氏の慧眼で、メンバーの技量と個性を様々な角度から査定され、粒ぞろいの布陣に磨きあげられています。この特徴的なピックアップのおかげで、一般投票の結果を超えた”神の裁定”が下された結果、台湾出身のツゥイとダンス番長のモモが復活当選し、現在あるTWICEの魅力が開花する結果を呼んだわけです。片や、今回のIZ*ONE選出には、“影のプロデューサー”であるカリスマを失って煮え切らないまま終わった番組内容を受けて、「国民プロデューサー(視聴者投票)」が迷走してしまいました。
正直、このままではTWICEのような国境を越えた大人気グループとなることは、かなり難しいと言わざるを得ません。デビューにあたっては、グループの個性をきっちりと表現できる、真のコンセプトプロデューサー降臨を期待しますが、果たしてそんな奇跡は起きるのでしょうか?