芸能

瀧川鯉昇と柳家喬太郎 正攻法と大胆ギャグ両面ある二人会

二人会は10年前から続けている

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、瀧川鯉昇と柳家喬太郎が、10年前から続けている二人会についてお届けする。

 * * *
 8月21日、池袋の東京芸術劇場プレイハウスで「瀧川鯉昇・柳家喬太郎二人会“古典こもり”」を観た。10年前から会場を替えて不定期に開催されている会で、これが13回目。

 落語芸術協会所属の瀧川鯉昇は今年で芸歴45年になるベテランで、その独特なフラが魅力。実は端正な語り口で古典をきっちりと語る正攻法の演者でありつつ、時に破天荒なギャグを大胆に取り入れて噺を再構築して爆笑を呼ぶ。この日の鯉昇はその両面で楽しませてくれた。

 まず1席目は『質屋庫』。三番蔵に化物が出るという噂を気に病んだ質屋の主人が番頭と出入りの熊五郎に寝ずの番で蔵を見張らせる噺だが、そこへ至るまでのやり取りが構成の大半を占め、丑三つ時に化物が出てからはアッと言う間にサゲに至る。この単調な噺を、鯉昇は登場人物それぞれを丹念に描いて飽きさせない。旦那が長々と語る「帯を質入れした長屋の女房のエピソード」に聴き入ってしまうのは語り口の心地好さ故。だからこそ「思えばあの質屋が恨めしい」でドッと笑いが起こる。

 続いて喬太郎は『牡丹灯籠』の「お峰殺し」。伴蔵の浮気を知った女房おみねは諍いの中で「新三郎様は幽霊に取り殺されたと評判になったけど、それは違う。まだ息のあった新三郎様を殺したのはアンタじゃないか!」と驚愕の真実を語る。これは三遊亭圓朝の原作にはない台詞。この夫婦が幽霊から大金をもらった「お札はがし」にはそんな秘密があったという、大胆な新解釈だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
宗田理先生
《『ぼくらの七日間戦争』宗田理さん95歳死去》10日前、最期のインタビューで語っていたこと「戦争反対」の信念
NEWSポストセブン
水原一平容疑者は現在どこにいるのだろうか(時事通信フォト)
大谷翔平に“口裏合わせ”懇願で水原一平容疑者への同情論は消滅 それでもくすぶるネットの「大谷批判」の根拠
NEWSポストセブン
大久保佳代子 都内一等地に1億5000万円近くのマンション購入、同居相手は誰か 本人は「50才になってからモテてる」と実感
大久保佳代子 都内一等地に1億5000万円近くのマンション購入、同居相手は誰か 本人は「50才になってからモテてる」と実感
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
ムキムキボディを披露した藤澤五月(Xより)
《ムキムキ筋肉美に思わぬ誤算》グラビア依頼殺到のロコ・ソラーレ藤澤五月選手「すべてお断り」の決断背景
NEWSポストセブン
(写真/時事通信フォト)
大谷翔平はプライベートな通信記録まで捜査当局に調べられたか 水原一平容疑者の“あまりにも罪深い”裏切り行為
NEWSポストセブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン
大谷翔平を待ち受ける試練(Getty Images)
【全文公開】大谷翔平、ハワイで計画する25億円リゾート別荘は“規格外” 不動産売買を目的とした会社「デコピン社」の役員欄には真美子さんの名前なし
女性セブン
羽生結弦の勝利の女神が休業
羽生結弦、衣装を手掛けるデザイナーが突然の休業 悪質なファンの心ない言動や無許可の二次創作が原因か
女性セブン
眞子さんと小室氏の今後は(写真は3月、22時を回る頃の2人)
小室圭さん・眞子さん夫妻、新居は“1LDK・40平米”の慎ましさ かつて暮らした秋篠宮邸との激しいギャップ「周囲に相談して決めたとは思えない」の声
女性セブン
いなば食品の社長(時事通信フォト)
いなば食品の入社辞退者が明かした「お詫びの品」はツナ缶 会社は「ボロ家ハラスメント」報道に反論 “給料3万減った”は「事実誤認」 
NEWSポストセブン