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2018.10.02 16:00  女性セブン

安楽死を求める2人の日本人、その考えに至るまでの苦悩

安楽死を願う志願者たちが1人のジャーナリストに打ち明けた思い

 病室の窓の向こうに、大きな海が広がる。海岸の近くにある病院で、個室のベッドから身を起こした女性はこう言った。

「このまま生きていても、寝たきりになって周りに迷惑をかけるだけ。だから私は、スイスに渡って安楽死をする準備を進めています」

 難病のため一語一語を確かめるようにゆっくりと発音するが、意識は明瞭だ。

 彼女の言葉を真剣な表情で聞くのは、ジャーナリストの宮下洋一さん(42才)。宮下さんは、2年の歳月をかけて世界6か国を訪問し、2017年12月に安楽死に関する取材をまとめた『安楽死を遂げるまで』(小学館)を刊行した。この9月、第40回講談社ノンフィクション賞を受賞するなど反響が広がっている。

 大島紺美さん(仮名・55才)は、安楽死のために海を渡ろうとする1人だ。

「今ここに医師が現れて、『この薬をのめば死ねます』と言われたら、私はすぐのみますよ」

 そう語る大島さんは、長く都内で翻訳者として活躍してきた。彼女に異変が起きたのは42才の頃だった。

「だんだんと足が重くなって疲れやすくなりました。次に手から物を落とす、滑舌が悪くなる、ふらつくなど全身の症状が数年かけて進行し、大好きだったヒールの靴も足裏が痛くて履けなくなりました」(大島さん)

 早めの更年期障害と思い、3年前に念のため受診すると、医師がためらいながら「気持ちの整理が必要です」とつぶやき、次のように告げた。

「小脳に萎縮が見られ、多系統萎縮症(MSA)と思われます。今後は徐々に運動機能がなくなり、思考以外の機能が奪われ、やがて胃ろうや人工呼吸器が必要になるでしょう」

 それを聞いた大島さんが最初に心配したのは愛犬だった。

「私は病気になる前から安楽死に興味があり、自分の運命は自分で決めたいと思っていました。医師から告知された時は“ずっと独身で生きてきたし、病気で動けなくなるなら富士の樹海に入ってひとりで死ねばいいや”と思ったほどです。でも残される愛犬のことだけが心配でたまらず、結局、東京を離れて姉のもとに身を寄せることにしました」(大島さん)

 三女の大島さんは故郷に住む長姉とともに暮らし始めた。その後、病がゆっくりと進行する妹の世話を長姉と次姉が見続ける。

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