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2018.10.10 07:00  マネーポストWEB

米国債利回りの上昇続く、中国の売りが最大のリスク要因に

米国金利の上昇が続けば米国株式市場が天井を打つ可能性も(ウォールストリート)


 米国債10年の利回りが10月3日(水)から急上昇しており、5日(金)終値では3.233%となった。これは2011年以来の高水準だ。

 米国金融市場で金利が上昇すれば、海外からドル資産に資金が流入し易くなる。その点は株式市場にとってはプラスであるが、一方で、株式市場から金利の高くなった金融商品へと資金シフトを起こす要因にもなる。

 今年の2月上旬にNYダウ指数が急落したがこの時、米国債10年の利回り急上昇が主な要因であった。足元では、8月下旬を底に再び上昇トレンドが出ており、株式市場への影響が懸念される。

 週足ベースでみると、前週のNYダウ指数はわずかな下落に留まったが、NASDAQ総合指数は3.2%下落となっている。一般に成長株は金利上昇に弱い面がある。

 NASDAQ総合指数は8月29日に高値(終値ベース)を付けた後、下落に転じ、9月17日に安値を付けた。その後は戻り歩調となったが、過去最高値を超えることなく下落、5日の終値は、9月17日の安値を下回っている。テクニカルにみると、初歩的な下げ相場の兆候を示している。

 このまま、金利上昇が続けばアメリカ株式市場は9年半以上続いた長期上昇相場の大天井を打つ可能性がある。

 金利上昇の要因としては、減税、積極財政により足元の景気が良いこと、FRB(連邦準備制度理事会)が金融システムの正常化を進めていることなどが挙げられようが、需給要因も無視できない。

 2018年3月末時点における米国債残高は17兆460億ドルで、前年同月比で7.4%増加している。これは、減税、積極財政による財源確保による影響が大きい。その保有主体をみると、海外機関が38%で最大。続いて、ペンションファンド、金融当局がそれぞれ14%、ミューチュアルファンドが12%、個人が10%を占める。そのほか、政府部門、銀行、保険会社なども所有している。

 FRBは金融政策の正常化を進めており、国債保有額の縮小を始めている。発行残高が増える中、第3位の保有主体が売りに回っている以上、トップである海外機関の買いに期待がかかるところだ。

 直近データとなる7月末の残高について、その内訳をみると、中国が最大で1兆1710億ドル、19%を占める。第2位は日本で1兆355億ドル(17%)、第3位はアイルランドで3002億ドル(5%)となっている。

 こうしてみると、中国、日本の保有比率が圧倒的に大きい。日本の残高は6月末と比べ51億ドル増えているが、中国は77億ドル減っている。この先も中国が残高を減らすようだと需給バランスは崩れ、金利上昇に歯止めがかからなくなってしまう。

 トランプ政権は7月6日、340億ドル相当の中国からの輸入製品に対して25%の追加関税をかける措置(第1弾)を発動し、8月23日には160億ドル相当に対して25%の追加関税措置(第2弾)を発動した。そして9月24日には2000億ドル相当に対して10%の追加関税措置(第3弾)を発動している。

 足元の米国債10年の利回り上昇は、中国が米国債投資に消極的となったことが要因である可能性が指摘されている。米国債を売却して、預金、不動産ローンといったほかのドル資産や、ユーロ、円などの他通貨建ての資産、あるいは新興国の国債などを買っている可能性もあるだろう。

 米中関係が密接なのは、サプライチェーン、バリューチェーンだけではない。トランプ政権は今更、その関係を見直そうとしているが、それは簡単ではない。中国を敵に回せば、アメリカの金融システムは大きなリスクにさらされる。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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