「虚偽自白」した人が、現場検証などで、見たこともない凶器や衣類を捨てた位置を正しく指摘するのも、この「賢いハンス」効果による。捜査員たちは、「正解とは違うところを指示しそうになれば、思わず『そうかな?』という表情になったり、えっと驚く仕草を見せたり、声が出たりする」。その微妙な反応が、「当てずっぽう」で、正しい位置を当てさせるのである。
不幸なことは、裁判官に「供述心理鑑定」の素養がなく、自白調書などに潜む不自然さを見抜けないことだ。罪なき人を罰するこのような仕組みへの認識を深め、冤罪を防ぐ一つの礎石としよう。
※週刊ポスト2018年10月26日号