2015年に米国国立心肺血液研究所が公表した「スプリント」と呼ばれる臨床試験で、50歳以上の約9400人の高血圧患者を追跡調査したところ、上の血圧を140未満まで下げた群よりも、120未満に下げた群のほうが心臓発作や脳卒中のリスクが低く、総死亡率も低いという結果が示されたものだが、
「この試験の対象者は、全員が高血圧だけでなく腎疾患または心血管系疾患の既往歴があり、平均BMI29.9(※BMIは体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で算出される。日本人は25以上で肥満とされる)という重度肥満群でした。そのため、『対象者に偏りがあるのではないか』との見方があり、アメリカ国内の別の学会から『ガイドラインの根拠とするには不十分』との声があがっています」(群星沖縄臨床研修センター長の徳田安春医師)
それにもかかわらず、国内のデータは黙殺され、海外のものにだけ依拠してこれまでの基準が変更されるかもしれないのだから、患者の側が戸惑うのも無理はない。
◆「薬の付き合い方」を考える
こうした状況に患者はどう立ち向かえばいいか。前出・岡田氏は「血圧をどう考えるかが大事」と指摘する。
「血圧だけが高い人と、血圧が高くて脳卒中や心臓病などの合併症がある人は、分けて考える必要があります。すでに重大な疾患のある人は治療が大事なので、高血圧を放置してはいけません。ただし“どこも悪くないけど診断の数値が高め”という場合は血圧の数値に振り回されるのではなく、薬を飲むよりも生活習慣の改善に努めることを優先すべきです」