「非認知能力という言葉は使っていなくても、この能力を育む教育を行っているところは日本でも増えているようです。主に私立のエリート校ですが、それらの学校の教育理念には『感性や自己表現の発達』『自ら考える力』など、ありとあらゆる非認知能力を育む言葉が出て来ます。2020年の文科省の教育改革にしっかり対応しているのです。
この改革は、もう革命といってもいいくらいの変化です。なぜなら今までの知識や技能の習得偏重から『自分で考え、表現し、判断する』力を育む教育にシフトするからです。
それだけではありません。教育の変化に加えて受験のシステムも変わります。そこでは80字から120字で書く記述式の問題が導入され、英語は話す書くが増え、そして自分はどんな人間かを書く調査書が導入されます。それはなぜか? 社会で求められる人材が以前とは変わってきているからです。AIが発達した今、インプットされたことをいち早く正確にアウトプットするロボット的能力ではなく、問題のない答えに自ら答えを導き出す能力を持った人が求められています。
2020年の教育改革はこの社会の変化に対応するために実施されるのです。社会が求めるのは『自分はどう生きたいのか?』『どんなふうに社会の役に立っていくのか』という自分らしさを見つめ、強い心で自分らしい人生を切り開いていく子供です。
そして大学が魅力を感じる受験生もそんな力を秘めた学生ということになります。ここでグッドニュースがあります。非認知能力を育む教育は、学校を選ばずとも今すぐに家庭で実践することができる、ということです」
スカイさんが通った学校で実践していた教育メソッドに沿って、重子さんが家庭で14年間実践した非認知能力を育むメソッドはいたってシンプル。大きく分けて3つの柱がある。
1つ目が「家庭のルール作り」。2つ目は「豊かな対話とコミュニケーション」、最後が「思う存分遊ばせる」こと。「まず、1つ目の『ルール』ですが、〈礼儀正しく生きる〉などの『基本ルール』に加え、やるべきことを定めた『Doルール』、してはいけないことを定めた『Don’tルール』の3種類のルールを決めます。ルールを守れたことによる達成感は、子供の自己肯定感を育てますし、失敗しても自主性を育ててくれますから、いいことずくめです」
2つ目の「対話」で大切なことは、「子供が学校から帰ってきたら『今日は学校でどんなことがあった?』『どんな一日だった?』など、イエス、ノーで答えられない質問をしてあげる。それだけでいいのです」
シンプルなようだが、そこには深い意味が隠されている。
「短い言葉ですが、子供にとっては『お母さんは、あなたのことを思っているのよ』という気遣いと愛を感じる言葉なのです。何気ない一言から、子供は『自分は愛されている』『必要とされている』と感じ、『ここが居場所だ』という実感、そしてやはり自己肯定感を得られるのです」
3つ目の「遊ぶ」は、英才教育を施そうとすればするほど忘れがちだ。しかし、見逃せない効能がある。