芸能

柳亭市馬 相撲協会の騒動をマクラに風格ある『阿武松』

柳亭市馬の「落語の上手さ」とは

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、当たり前の噺を普通に楽しく聴かせる柳亭市馬の「落語の上手さ」についてお届けする。

 * * *
 落語協会会長、柳亭市馬。当たり前の噺を普通に演って楽しく聴かせる「落語の上手さ」では今、この人の右に出る者はいないだろう。

 10月9日、市馬の定例独演会「市馬落語集」(国立演芸場)に出掛けた。最近だと9月15日の「よってたかって秋らくご」(よみうりホール)で市馬の『らくだ』を、10月3日の「市馬・一之輔二人会」(深川江戸資料館)では『たらちね』『御神酒徳利』を聴いたが、独演会は8月27日の麻布区民ホール(演目は『淀五郎』『お化け長屋』)以来だ。

 元横綱・輪島が亡くなったのはこの前日のこと。1席目の高座に上がった市馬はマクラで「少し前に北の富士と対談して……」と語り始め、輪島の訃報や元貴乃花親方の騒動などに触れた後、得意の相撲甚句を披露。そして入っていった落語は相撲が題材の『阿武松』だった。

 力士になろうと能登の国から江戸に出て武隈に弟子入りした若者が、度外れた大飯食らいを理由に破門され、腹いっぱい食べて死のうと泊まった宿屋で主人に諭され錣山に再入門。めきめき頭角を現わし、小柳の名で入幕すると「まんまの仇」武隈に圧勝、これを観た長州公のお抱え力士「阿武松」となり、六代横綱に出世した……これが人情噺『阿武松』。ちなみに能登、すなわち石川県は輪島の出身地でもあり、「阿武松」「錣山」は旧貴乃花一門関連の親方の名としてニュースに度々登場する。この日『阿武松』を演じたのはそうした連想ゆえかもしれない。市馬らしい風格のある『阿武松』だった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン