国内

停電中でも役に立つ 災害時の生命線となるラジオの役割

ラジオは震災時の生命線(写真/アフロ)

 今年9月6日午前3時8分。北海道で初めて震度7を観測した北海道胆振東部地震が発生した。

 上智大学文学部新聞学科教授でジャーナリストの水島宏明さんは、たまたま札幌の実家に滞在しており、睡眠中に大きな揺れを感じた。スマホから緊急地震速報が鳴り、テレビをつけるとNHKが緊急速報を放送していた。しかし次の瞬間、ブツッという音とともにすべての明かりが消えた。地震による停電だった。

 水島さんは、手動で発電する災害用ラジオを探し出し、暗がりのなかで地元のSTVラジオに周波数を合わせた。すぐに被害状況を伝えるアナウンサーの声が聞こえた。

「テレビはつかず、スマホも途中から基地局がダウンして使えなくなるなか、ラジオからの情報は重宝しました。とりわけ『〇〇でスマホの充電ができます』『〇〇というガソリンスタンドで〇〇が手に入ります』といったライフラインに関する情報が役立った。リポーターが車に乗って街の様子を生放送で伝えたり、リスナーが『〇〇のドラッグストアで100人の列ができている』『大通公園のトイレが閉鎖になった』などとリアルタイムの情報を伝えてくれたんです」(水島さん)

 ネットやテレビがつながらないなか、ラジオから流れる情報は大きな価値を持つ。STVラジオ編成制作部チーフマネージャーの大針三治さんも「最もパニックを呼んだのは停電」と振り返る。

「北海道全土の停電は想定していませんでした。停電中にはアナウンサーが『火の元に注意してください』と注意を呼びかけました。コンビニやガソリンスタンドなどの商品情報は、客が殺到してパニックにならないよう確認の取れたものだけを伝えました」

 緊急事態のなか、大針さんはラジオの役割を再確認した。

「ネットに氾濫する情報には疑わしいものもあったので、“おれたちのラジオ放送が生命線だ”と自覚して、正確な情報を繰り返し報じました。また一般リスナーの“こういう不安な夜を迎えています”との声も可能な限り伝えました。“不安が増すだけ”との声もありましたが、こうした生の声を紹介することで、“自分だけが不安じゃないんだ”“孤独じゃないんだ”と思ってもらうことを期待しました。一緒に闘っている人がいるとわかると、北海道の被災者がひとつになれると思ったんです」(大針さん)

※女性セブン2018年11月22日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

結婚生活に終わりを告げた羽生結弦(SNSより)
【全文公開】羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんが地元ローカル番組に生出演 “結婚していた3か間”については口を閉ざすも、再出演は快諾
女性セブン
「二時間だけのバカンス」のMV監督は椎名のパートナー
「ヒカルちゃん、ずりぃよ」宇多田ヒカルと椎名林檎がテレビ初共演 同期デビューでプライベートでも深いつきあいの歌姫2人の交友録
女性セブン
NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
《重い病気を持った子を授かった夫婦の軌跡》医師は「助からないので、治療はしない」と絶望的な言葉、それでも夫婦は諦めなかった
《重い病気を持った子を授かった夫婦の軌跡》医師は「助からないので、治療はしない」と絶望的な言葉、それでも夫婦は諦めなかった
女性セブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン