芸能

岸部一徳 『死の棘』で知った“棒読み”を生かす芝居哲学

岸部一徳が『死の棘』の思い出を語る

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、俳優・岸部一徳が、数多く出演した大林宣彦監督作品、本格的に俳優の仕事に取り組むきっかけとなった小栗康平監督作『死の棘』に出演した思い出について語った言葉をお届けする。

 * * *
 ミュージシャンから俳優に転身した岸部一徳は、一九八〇年代以降は名監督たちの映画に次々と出演する。中でも大林宣彦監督作品には数多く出てきた。

「大林さんは映らないところをきちんと作る人です。たとえば、こうしてインタビューしているシーンを撮ったとして、机の上は映らないとします。でも、監督はそこも美術部に小道具を揃えさせる。それはたまたま美術の話ですが、俳優も同じだと思いました。省略はしちゃだめだ、という。自分が映っていないカットでも、誰かがやっているのならちゃんと向こう側に座って相手をする。

 僕は、芝居で大事なのはリアクションだと思っているところがあります。誰かが大事なセリフを言っている時にそれを聞いている、そのリアクション。むしろ、セリフで何かを言う側よりも、セリフを聞いて、それを自分の中でその役としてどう受け止め、どう感じているかを表現することの方が大事だという感じでいます。

 それと構図ですね。監督がどういう風な構図を作ろうとしていて、たとえば端っこに座っているなら、それがどう映るのか。そこを同時に考えているところもあります。監督はアングルで一つの画を作っていくわけですから、そのフレームにどう収まっているのかは考えますね」

 九〇年の小栗康平監督作『死の棘』では、精神を病んでいく妻(松坂慶子)に献身的に尽くす夫を演じ、高い評価を受ける。

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン