かたや、勝久氏が自ら保有していた大塚家具の株式売却資金で設立した匠大塚は、大塚家具を追われた社員たちの受け皿となった。創業者として自分についてきた社員たちに対する贖罪の気持ちだったのだろう。
「匠大塚に入ると、大塚家具時代よりも給料を上げてもらいました。会長には感謝しています」(大塚家具元社員)
人を大切にする勝久氏に対して、ひたすらコスト削減で利益を追求しようとしている久美子氏との経営姿勢の違いがここからも見て取れる。
経営危機に陥っている大塚家具は9月28日より在庫一掃セールを断行、巻き返しを図っている。最大80%割引の在庫一掃セールで10月は107.7%と15か月ぶりに前年同期比割れを避けることはできた。
しかし、数字をさかのぼれば、前年度は前前年度の71.8%、つまり前前年から見れば今年の10月も大幅なマイナスになっているに過ぎないのだ。ちなみに前前年度にあたる2016年12月期は45億円の営業赤字に転落した年でもある。
このまま大幅な在庫一掃セールを続けてもその効果はあまりにも限定的といえるが、それでも久美子氏は売り上げ増をはかるために11月25日までセールを延長した。狙いは当面の資金繰りの悪化を何とか解消したというということだけではない。
コストカットが久美子氏の経営再建手法。いま、大塚家具にとって最大のコストは賃貸料だ。売り場面積を縮小し、空きスペースを転貸すれば賃料を下げられるだけでなく、保証金も戻ってくる。
すでに昨年から貸会議室大手のTKP(ティーケーピー)と提携し、新宿や仙台の空きスペースを会議室などで提供。11月には福岡のショールームの一部スペースもTKPに提供する話が浮上している。しかしコスト削減だけで大塚家具の再生ができるのか。もはや周囲の目は冷たくなる一方だ。