さらに、ムロさんの演技も親近性効果を際立たせている。くるくると移り変わる表情や、シーンごとに調子 が変わるセリフ回し、身体中から漂わせる雰囲気といい、どんどんイケメンに見えてくる。まるでトリックアートの世界、だまし絵を見ているような気分になってくるではないか。
同じ絵なのに視点を変えれば、それまで見ていたモノとは違うモノが見えてくる。影がつけば物体が浮き上がり、まっすぐの線は背景を変えればぐにゃぐにゃと曲がって見える。静止画なのに円はぐるぐると動きだし、同じ長さや大きさでも、枠や線を加えるだけで変わって見えてくる。そんな錯覚、錯視を起こさせるのがだまし絵だが、ドラマの中のムロツヨシを見ていると、ムロ流の“だまし絵効果”にはまっていくような感じがする。
ここぞ!という時の表情や動きが、他のシーンよりも浮き上がるように引き立って見えてくるのだ。コミカルな演技や大げさな動き、緩急のあるセリフも、かっこよさを引き立たせるための下地や背景となり、それとは対照的なシリアスな演技がよりシリアスになり、見ている側の胸をキュンとさせる。
悲しい時や切ない時でも、ヒロインを見る時はどこか表情も声のトーンも柔らかい。悲しいのに微笑んでいるような、切なくて泣きそうなのに落ち着いているような、相反する細やかな表情からは、彼の心にある葛藤を感じさせる。そしてこういうシーンの時、ムロさんはほとんど動きを見せない。演出やカメラワークの巧さもあるだろうが、じっと相手 を見つめていることが多い。それが逆にだまし絵のような効果を生み、心の中の感情の揺れや動きを感じさせるのではないだろうか。
これも彼の魅力と演技力があってのこと。だまし絵のような不思議な魅力で人を引き付けてしまうイケメン・ムロツヨシを、しばし存分に楽しもう。