振り返れば2年前、評判をとった木村佳乃主演のドラマ『僕のヤバイ妻』(フジテレビ系)。この作品でも、やはり「不倫された妻」を演じた木村さん。あの時は復讐に走る「爽快さ」が実にいい味を出していました。夫を追い詰めていく妻の姿を見ながら、視聴者の胸はすかっとしたものです。しかし、今回のドラマは質が違うはず。「爽快さ」は引っ込めて、「どんよりした暗さ」「陰々滅々とした恨みつらみ」で勝負してほしい。
木村さんは今、役者として乗りに乗っている時期でしょう。汚れ役や悪女的な役が次々に舞い込むのだから役者冥利に尽きる。例えば来年1月スタートの連ドラ『後妻業』(フジテレビ系)で主演に決まったとか。こちらは資産家の高齢者を狙い遺産相続目当てに結婚詐欺を重ね次々に相手を殺していく極悪女。だとすれば、ますます男をたぶらかすいやらしさ、ねっとりとした陰湿な欲望と暗さが求められることでしょう。
「皆さんの期待をいい意味で裏切っていきたいと思っています」と新ドラマの制作発表で胸を張った木村さん。たしかに役者としての力は凄いものがある。特に、感情を爆発させた時の勢いなんて、まわりが凍りつくほどのエネルギー。『はつ恋』『ひよっこ』といった過去作品の中で、それは証明済みです。
だからこそ、もっともっと負のエネルギーをほとばしらせてみせてほしい。湿った暗い情熱の漲る姿を、見てみたい。役者とは、いろいろなものが注がれていく、いわば「空の器」。めくるめく変身していく姿を期待しています。