それでいて、茶化す相手への愛情みたいなものがあるんだよ。だから歳は離れていたけど、ウマがあったんだろうね。
『ちびまる子ちゃん』もまさにそうだよな。一見して子供向けのように感じるけど、実はシニカルな視点がある。まる子ってのは単に素直な子供じゃなくて、物事を裏やナナメから見て、ずる賢く立ち回ろうとするところがあるから面白いんだよね。だから子供だけじゃなく、大人も楽しめる作品になる。
最近になって、シニカルな笑いができる女芸人がちょいちょい出てきたのも、さくらももこの影響じゃないか? そういうセンスを子供たちに広めたのは、すごく価値のあることだと思うよね。PTA推奨じゃない笑いを、誰も嫌がらない形で広めたのはすごいよ。
もう『ちびまる子ちゃん』は、『サザエさん』に肩を並べたんじゃないか? 平成を代表するアニメだね。まだ色々と描いてほしかったんで、本当に残念だよ。
でも思うんだけど、声優のTARAKOがやってるまる子の声や喋り方ってのは、まんまさくらさんなんだよな。声優が研究したのか、その辺はよく知らないけどもうソックリでさ。
アレを見ていると、「さくらももこはずっと生き続けていく」って気がするね。
※ビートたけし・著/『「さみしさ」の研究』(小学館新書)より