会場に集まった女性たちは、思い思いに着飾った華やかな装いをしている。ドリンクや料理を楽しみながら語らう様子は、一見すると何の変哲もないパーティーのようでもある。しかし「ぬい」「オ社」「ファンサ」「円盤」(※長くなるので後ほど解説)などの“ギョーカイ用語”が飛び交い、壇上の大スクリーンにはゲームやアニメなど人気コンテンツを解説する写真が流れる。さらにはイベント参加者のツイートがリアルタイムで映し出され、めまぐるしく更新されていく。ここはまさしくオタク界の浪費最前線なのだと理解させられる光景である。
彼女たちは、共通のコンテンツに興味があるわけではない。互いに異なる「推し」の持ち主である。しかし、好きなものに対し無限の愛を注ぐという点ではみな同じであり、ただその一点さえあれば互いに共感しあい無限に繋がることができる……ようなのだ。
壇上には「浪費の勲章BOX」なるものも設置されていた。自らの浪費で手に入れたグッズを自由に入れることができ、また他人の入れたグッズに興味があれば自由に持ち帰ることができるという物々交換のようなシステムだ。「推し」への出費をいとわないとはいえ、限られた資金を有効に活用する非常にたくましいアイデアである。ちなみに、劇団雌猫はオタク女子の浪費活動を応援するため、資金運用術に関するイベントも手がけているというから驚きである。
どんなに「実質タダ論」を振りかざそうと、使ったお金はなかったことにはならないし、外から見れば彼女たちの行動は「浪費」としか言いようがない側面がある。が、会場に集まった女性たちのなんと幸せそうなことか。消費の冷え込みが叫ばれて久しい日本経済を回していくのは、彼女たちのような存在なのかもしれない。
【※ぬい…人気のキャラクターをかたどった大小様々なぬいぐるみのこと/オ社…東京ディズニーリゾートを運営する株式会社オリエンタルランドの略/ファンサ…ファンサービスの略。コンサート会場などでタレントが手を振ってくれたりウィンクしてくれること。/円盤…DVD、Blu-rayのこと】
【プロフィール】劇団雌猫(げきだんめすねこ)/平成元年生まれのオタク女4人組、もぐもぐ、ひらりさ、かん、ユッケからなるサークル。2016年12月にさまざまなジャンルのオタクがお財布事情を告白する同人誌『悪友 vol.1浪費』を刊行。ネットを中心に大きな話題となり、2017年8月には『浪費図鑑』(小学館)として書籍化された。最新刊『シン・浪費図鑑』『まんが浪費図鑑』(いずれも小学館刊)『だから私はメイクする』(柏書房刊)が発売中。『浪費図鑑』シリーズ公式サイトhttps://www.shogakukan.co.jp/pr/rohi_zukan/