「特に首都圏において、中学校入試は多様化している。その代表的なケースは、従来の4教科(国語、算数、理科、社会)の枠を取り払って、知識の量ではなく、思考力そのものを問う『思考力型入試』の増加です」
首都圏中学模試センターによれば、2014年には38校のみが実施していた「思考力型入試」は、2018年には136校に激増した。国立お茶の水女子大学附属中学校も2021年以降、現在の4教科入試を廃止し、総合型の入試を実施することを公表している。
各校がさまざまな試みをするなかでもユニークなのは、東京都北区にある聖学院中学校が出題する「レゴブロックを使う思考力問題」だ。問題例は以下の通り。
まず、ある国の年間降水量とお米の生産量などのグラフを提示し、その国の抱える課題を読み取らせてから、次のように命じる。
「その解決策をレゴで表現しなさい。また、出来上がった作品について150字程度で説明をしなさい」
試験中、受験生はせっせとレゴを組み立てることになる。独特の試験の狙いを、同校副校長の清水広幸さんが解説する。
「よく誤解されますが、レゴの上手な子が合格するわけでは決してありません。私たちが求めているのは、レゴのなかに自分で考えた解決策のメッセージを込め、それを文章で表現する能力です。暗記した正解を限られた時間のなかで紙の上に書く力ではなく、与えられた課題を読み取り、社会や歴史を理解し、自然や数学的観点から考える総合的な能力を身につけてほしいのです」
2018年には、この試験方法で5人の生徒が合格を手にした。試験を突破する力を持つ子供たちには特徴があると、清水副校長が続ける。
「思考力のある子供たちは勉強や学校生活に“やらされ感”がないのです。自ら課題を持って勉強したいと望んでいるので、入学後にさらに学力が伸びます。かつ学校生活にも前向きで、リーダーシップを取ってみんなをまとめる子が多いです」
こうしたタイプがクラスという集団にいると、周囲も影響を受け、全員が伸びる可能性がある。
「思考力型入試に合格するような個性豊かな子供たちが、従来のペーパーテストを得意とする子らと1つの教室でともに過ごせば、違う能力を持つ者が入り交じることで相乗効果が発揮されて、集団で学びの効果が高まります。学校側としても願ったりかなったりですし、受験する側も自分に合った学校を選べるというメリットがあります」(おおたさん)
※女性セブン2018年12月20日号