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なかにし礼氏「がんと共に生き、がんで生涯を終えたい」

「がんに生きる」を上梓したなかにし礼氏

 2012年に食道がんが発症、そしてその2年半後に再発。二度の闘病生活を経験した直木賞作家のなかにし礼氏(80)は、「がんは必ずしも“敵”ではない」と話す。悲観的にならず、がんという現実と向き合うにはどうすればいいか。

 なかにし氏は、二度の闘病を経て到達した境地を『がんに生きる』(小学館刊)に綴った。著書で強く主張するのは、「がんは好機である」という考え方だ。

「絶望したり自暴自棄になる人が多いけど、本当は好機なんです。がんになったことで新しい経験や、新たな目覚めを味わえるチャンスだと思ってほしい」(なかにし氏、以下「」内同)

 なかにし氏にとっての最大の“目覚め”は、「二人の自分」に気づいたことだ。

「病院のベッドに横たわりながら点滴を受ける『ボディ』としての自分と、そのボディを客観的に見ている『精神的な存在』としての自分です。がんを抱えて骸になろうとするボディと違い、自由な精神の自分は夢を見ることも小説を書くこともできる。いくら病が進行していても、ボディを切り離せば、精神的な自分は何でも想像することができるんです。

 もちろん一種の幻想だけど、二人の自分に気づいたことで僕はずいぶん助けられた。どんな大病でも病気は人生の一部分でしかなく、そこから離れた魂のようなものに重きをおかないと、生きている意味がないんです」

 どれほど重い病気を抱えていても、精神的な自分は何物にも束縛されない──これこそ、二度のがんを経たなかにし氏がたどり着いた境地である。

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