ようやく迎えたMCになると、田原は落ち着いた口調でこう話した。
「2日連続はやめてください。だって昨日、超早く寝たからね。でも、あんまり寝れないのね。皆もそうでしょ? 早く目が覚めちゃうよね。若いときは寝れたのに。6時間くらい寝ると、パッと目が覚めてね。
まだ体力戻ってないなと思って、またシップを体に1枚、2枚、3枚……と貼り直して。そしたら、クサくて寒くて眠れなかった。冷房入ってるのかと思ったら、俺のシップだった」
会場が爆笑に包まれた後、『ごめんよ涙』でさらに沸かせる。『愛しすぎて』では海野あゆみの重厚感溢れるサックスが鳴り響き、田原は優しい歌声でしっとりと聞かせた。
アンコール1曲目は、2003年発売の『Dynamite Survival』を持ってきた。原曲はグロリア・ゲイナー『I Will survive』で、かつて布施明が『恋のサバイバル』としてカバーしたこともあるように、英詞のテーマは恋愛だ。
だが、作詞家の真間稜が手掛けた日本語詞を読むと、『Dynamite Survival』は人生を歌っている。それは、田原の生き様を綴っているように読める。もう一度、天下を盗るまで戦い抜くという宣言歌なのだ。
過酷な2日連続公演のアンコールで歌う『Dynamite Survival』の歌詞は心に響いた。馴染みの薄い観客とのコール&レスポンスが見事に決まった宮崎、鹿児島公演で証明したように、田原俊彦はもう一度、時代とシンクロできるはずだ。
野球は打てなければ代打、疲れが見えたら交代投手が控えている。2時間歌って踊る57歳の田原俊彦に代わりはいない。宮崎、鹿児島と2日連続公演でも、手を抜かずに完全燃焼した。私は、完全に田原俊彦を見くびっていたと反省した。