頑固、不機嫌、無気力、協調性ゼロ…。不可解で厄介な男親や夫の扱いに困惑し、手こずっている介護者は多い。1950年生まれの団塊世代である「生活とリハビリ研究所」代表の三好春樹さんは、介護職の第一人者として、この世代がいよいよ迎える老年期は、特に男性にとって危機だと言う。
扱いにくい高齢男性への対応について、三好さんはこうアドバイスをする。
「高齢男性を理解するのに1つ重要なことは、男が最後に求めるのは“母性”ということ。子供に還っていく。男は元来マザコンですが、弱みを見せられない強い“自立男”ほど、母性を求める。しかし、実の母親は存命していない場合が多いので、母親のようにかかわり、無条件に自分を認めてくれ、弱みを見せられる人ということです」
三好さんが特別養護老人ホームに勤務していたときの実例を話してくれた。
「特養では排泄が不自由になる人も多く、男性にとっては失敗したり、おむつ交換をされたりが大きなストレスになります。ぼくのいた施設では寮母長(介護職員)が母親役を担っていました。失敗の処理をして、他の職員には知らせていないフリをする。すると、安心して落ち着くのです。このような母親役は娘には難しい。夫婦関係にもよりますが妻か、介護職員でもよいのです」
認知機能が落ちて、高齢男性が妻やヘルパーさんを「お母さん」と呼び始めることはよくあること。これは女性にはあまり見られず、男のサガなのではと三好さんは見る。
「24才で介護の仕事を始めてから、“自立が重要”という理念は崩壊しました。人間は相互依存の中で生きていることに気づいたのです。母性を求める代わりに色気という形で表れる人もいます。母と子、男と女、いずれも人間関係の基本でエロス的関係。決して卑猥な意味ではなく、人として求め合うほんわりとした好感が人を癒すということ。どんな父親も、いつか老いて子供に還っていくことを理解してもらえると、介護職としてもうれしいですね」
※女性セブン2019年1月3・10日号