学生運動といえば、この一月は東大安田講堂事件から五十年である。東大は入試が中止になったが、もう一つの戦場となった日大では厳戒の中入試は敢行された。ところが、日大の受験生は前年より増え、偏差値も急上昇した。
それまで日大は中位校の中でもランクが高い方ではなかったが、全共闘運動で評価が変わったのである。学生たちは立看板を書きビラを配った。おお、日大生が漢字を書ける。学生たちは団交で理事を追いつめた。おお、日大生が理屈を言える。日大相撲部出身の力士が自分の名前以外の漢字を書けないと言われた時代だ。日大生は実は優秀だと、評価は一変し、ランクは一気に上昇した。皮肉なことに、大学に敵対した全共闘が日大ブランドを向上させたのである。
ところで、平和になった昨今の日大はどうだろうか。
昨年十二月十三日付朝日新聞は「日大と東京医大 志望者離れ」と報じている。東京医大は別に論じよう。日大はアメラグ部の悪質タックル事件、理事長・学長の不誠実な対応が影響していると、予備校関係者は分析している。
学歴や大学ランクは、社会・歴史が複雑に反映されている。
●くれ・ともふさ/1946年生まれ。日本マンガ学会前会長。近著に本連載をまとめた『日本衆愚社会』(小学館新書)。
※週刊ポスト2019年1月18・25日号