そのログを丁寧に確認していくなかで、様々なことがわかりました。漫画村の運営者たちは、身元が分からないように慎重に利用していたことがうかがえるのですが、人間がやることに絶対はありません。管理者用メールアドレスのうちの一つから、個人的な情報をたどることができました。その結果、新宿区の高級タワーマンションの一室が、漫画村運営の拠点のひとつとなっていた可能性が浮上しました。著作権を侵害したサイトの収益で、ずいぶんと羽振りのよい暮らしをしているのが垣間見えました。また、漫画村だけでなく他のサイトの運営にも関わって金銭を得ていることも分かりました。
クラウドフレア社からの情報は、まだ一部が伏せられているため、それをめぐっての裁判が続いています。プロバイダ責任制限法で開示される内容は、情報発信者の氏名または名称、その住所、メールアドレス、IPアドレス、権利侵害に関係するサーバログイン時のログイン情報になります。一部はすでに開示されているのですが、判決直前に争う内容の答弁書が出されたため、判決が先延ばしになりました。いまの予定では、3月に次回の裁判期日となっております。
海賊版サイトに対して、外国サーバやサービスを利用しているから泣き寝入りするしかないと思い込んでいる人もいますが、決してそんなことはありません。日本での活動実績がある会社であれば、日本で裁判を起こすことができます。アメリカの会社が相手なら、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)にのっとったやり方で、権利侵害対策を行うことが出来ます。
クラウドフレア社との裁判は今も続いています。次回、3月が裁判期日となっています。その後、判決となれば、漫画村が違法である(著作権侵害があった)と司法で初めての判断が下されることになるでしょう。
漫画村に対し、初めて裁判所で判断が下されるときは、もうそこまで来ているのかもしれません。
●なかじまひろゆき/弁護士(第二東京弁護士会所属)。2010年神戸大学大学院法学研究科法科大学院修了、衆議院議員秘書を経て2011年弁護士登録。国会議員政策担当秘書の資格所持。サイバー犯罪に関しては警察に捜査協力も行う。ITと知的財産分野を中心に活動する他、電力会社や医療法人の顧問、有名ファッションブランドのプロデューサーを務めるなど多岐にわたって活躍する。海賊版問題を解決できる『銀河英雄伝説』ラインハルト・フォン・ローエングラムのような存在の到来を密かに待っている。