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2019.01.16 07:00  マネーポストWEB

相続争いの75%が遺産5000万円以下 紛争避けるには財産目録の作成を

日頃の情報共有が大切


「死んだ後のこと、今から話しておこうか」──高齢の両親に、そう切り出すことのハードルは思いの外高い。「縁起でもない……」「早く死ねって言うのか!?」そんな反応が返ってくるかもしれない。

「終活」や「断捨離」という言葉が広まっても、死後の準備にどこか後ろ向きな気持ちを抱く人は多い。だが遺される側に立ってみれば、いざ亡くなったときの負担は想像以上に大きい。

「自分が死ぬことが前提ですから、考えたくないと思うのは当然です。だからと言って、そのまま放置していてもいつかは“その時”がやってくる。そうなる前に、親族まで交えた『家族会議』をしておくことで、回避できる後々の面倒やトラブルは数多くあります」

 そう話すのは、まこと法律事務所の代表弁護士・北村真一氏だ。「面倒」や「トラブル」の多くが“お金絡み”だ。遺族同士のトラブルと言えば「相続」である。

 2015年に相続税の基礎控除額が引き下げられ、相続に悩まされる人は増えた。また、2017年の司法統計によると、家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割紛争の実に75%が、遺産総額5000万円以下のもので、“うちはお金持ちじゃないから大丈夫”と思っている家族ほど、トラブルに発展している実態が浮かび上がる。

 ただ、難しいのは、“相続について話し合う”ということ自体がタブー視されてきたことだ。その結果、“どんな財産があるのか”すら、共有できていない家族が圧倒的に多い。財産を把握することの重要性を税理士法人タックス・アイズ代表の五十嵐明彦氏は説く。

「預貯金の額、不動産や有価証券、貴重品の有無、果ては借金まで、死後に正確に把握することは難しい。あるはずのものがなかったり、ないはずのものが後になって出てきたりすると、深刻なトラブルにつながる。相続を“争続”にしないためには、何よりまず生前の家族会議で『財産目録』を作成しておくことです」

 では、相続人が遺産分割協議をスムーズに行なう上で絶大な効果を発揮する、「財産目録」はどのように作ればよいのか。

◆「通帳レス」時代に「紙」で残す意味

「父が亡くなってから、普段利用していた銀行の通帳を確認したら、100万円ほどしか入っていなかったんです。貯蓄に熱心で、散財するような性格ではなかったから、おかしいなと。遺品には他の銀行の通帳はなかったので、片っ端から問い合わせをしたら、別の銀行に500万円ほど入った口座を持っていた。あのまま気付かなかったらと思うと……」(50代男性)

 両親がどこの銀行に口座を持っているかすべてわかる、と自信を持って言える人は珍しいだろう。ペイオフ対策に、複数の口座に分散させているケースもある。

 通帳が見つかればいいが、エコの観点から「通帳レス」のサービスをしている銀行も多い。手数料の優遇などもあり普及が進んでいるが、それが落とし穴にもなる。

「最近では、通帳もキャッシュカードもないネット銀行が見落とされているケースが増えている。財産目録作成の際には、〈貯金が○○円〉といった書き方ではなく、銀行名や支店名、通帳の保管場所なども一緒に記載した方がいいでしょう」(前出・五十嵐氏)

 実家片づけ整理協会代表理事の渡部亜矢氏は「通帳を並べて写真を撮っておく手もある」と話す。前出・五十嵐氏はこう続ける。

「この1月から、10年以上手が付けられていない口座は『休眠口座』として民間公益活動などに活用されることになりました。休眠口座とみなされても払い戻しは可能で、預金がなくなるわけではありませんが、そうした口座は遺産分割の際の解約に煩雑な手続きが必要。生前の目録作成時に、使っていない口座は整理しておくといいでしょう」

 タンス預金がそのまま眠り続けるといった例もある。へそくりの金額と“隠し場所”も目録に記載できるのが理想的だという。

※週刊ポスト2019年1月18・25日号

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