芸能

市原悦子さん、最期の病室に台本持ち込み発声練習をしていた

1月12日、心不全で亡くなった市原悦子さん

『まんが日本昔ばなし』(TBS系)の、あの木訥として穏やかで、耳元で語りかけるような独特の優しい声。「むかーし、むかし、あるところに…」。その声は、1980年代を生きた日本人に、いつも懐かしい故郷を思い起こさせた。

 名女優・市原悦子さん(享年82)は、最期まで、そんな「声」にこだわり、女優魂を燃やし続けていた。

「最後に会ったのは、入院される直前の昨年11月半ばのことでした。都内マンションの自宅にお邪魔したんです。市原さんは車椅子だったんですけど、いつも通りに口は達者で、体調を尋ねると、“げんきよ~”と笑い声にもハリがありました。相変わらず、聞き惚れるような“声”でした」(市原さんの友人)

 2年ほど前、「自己免疫性脊髄炎」という難病に侵された市原さんは、手足が動きづらくなり、麻痺や感覚障害に苦しんだ。それを境に、映画やドラマなどの映像の世界から姿を消した。

 活動休止期間は1年4か月に及ぶ。しかし、「もう一度、私の声をお茶の間に届けたい」という情熱は決して消えなかった。

「発症後は、あまりしゃべらない時期が続き、声帯も細くなったようです。市原さんは“声を出さないでいると、声は縮んで小さくなっちゃうのよ”と、友人を自宅に招いてはおしゃべりに花を咲かせ、おおげさなぐらい大きな声で笑っていました。一緒に歌をうたうこともあった。そうして、再び声を取り戻していったんです」(別の友人)

 病院で懸命にリハビリをしても、足が言うことを聞かない。立ち上がれない。女優としてスポットライトを浴びてきた市原さんにとっては、そんな姿を見せるのは、複雑な思いもあっただろう。それでも震える手で、歪んだ文字でも構わずに、多くの友人たちに手紙を書き、「また会いに来てね」と綴った。

 そして、念願の復帰を果たす。昨年3月からNHK番組『おやすみ日本 眠いいね!』内のコーナー『日本眠いい昔ばなし』を担当した。市原さんがこだわり続けてきた「声」で出演した。日本人に故郷を思い出させる、あの声のままだった。

「市原さんの強い希望での復帰でした。とはいえ、NHKまで収録に出てこられない。それならばと、異例のことですが、自宅収録を行いました。録音スタッフが機材を持って市原さんの自宅を訪れ、最初の数回は自宅のベッドの上でパジャマのまま、体を起こして朗読を収録しました。そのうち、車椅子に座って収録をするようになりました」(芸能関係者)

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン