外資が次々に買収

 その後ジャーナリストとなりアメリカの介護現場を取材した私は、それらが全て笑えない現実であることを知る。全国チェーンの中流層向け民間老人ホーム(月額利用料20万円程度)でさえ、人件費を極限まで減らし、50人の入所者をたった一人の介護士が担当させられていた。その施設に母親を預けた女性の話では、オムツ交換は3日に1回、体も拭いてもらえず放置された挙句に意識不明の状態で発見され、亡くなったという。

 投資家向けセミナーで聞いた話は、全てをビジネスにした「貧困大国アメリカ」の現実であり、日本が後追いする近未来だったのだ。

◆日本人の老後は宝の山

「日本の介護は公的なものだから、そこまで酷くならないだろう」と考えるのは早計だ。投資家からすれば、公的制度だからこそ確実な収入が見込める上、世界でも高齢化のトップランナーである日本では、介護の需要は今後右肩上がりで増えてゆく。日本人の老後は、投資家や外国企業から見ると「宝の山」なのだ。

「きつい、きたない、給料安い」の3Kと言われる介護職は定着率が低く、現場は慢性的な人手不足に悩まされている。介護福祉士の資格を持ちながら現場で働いていない人が53万人もいるが、政府はそうした有資格者が働きやすい環境を整備する代わりに、それまで閉ざしてきた介護分野への外国人技能実習生参入に門戸を開いた。しかも「質より量」と言わんばかりに、当初実習生に課していた日本語能力のレベルまで大幅に緩和している。

 4月からは外国人でも新たな在留資格で介護職に就けるようになり、今後5年間で5万~6万人の受け入れを目論んでいる。改正入管法では「日本人と同等以上の賃金」を外国人受け入れの条件としたが、すでにブラック化が問題になっている現場で、企業に努力目標を定めるだけでは厳しいだろう。

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