国際ジャーナリストの堤未果氏

 外資系なら自社で外国人を雇ってから日本の介護現場に派遣するなどの抜け道もある。ただでさえ他の職種に比べ平均10万円安い介護士の月給が、安価な外国人介護士との価格競争で引き下げられれば、投資家が喜ぶ「人件費削減」に好都合だからだ。

 さらに今後は、介護保険適用外サービスが解禁され、保険適用のサービスと組み合わせて提供する「混合介護」も進んでいく。

 保険外のサービスもできるとなると、事業所はサービスの内容、価格を自由に決められるため「利用料アップ」の道が開かれる。富裕層向けの保険外サービスばかりがメニューに増え、そうでない利用者は蚊帳の外に置かれることになるだろう。

 介護が必要になったとき、ふと地域を見渡すと、富裕層向けの介護施設ばかりになっている光景を想像してほしい。それは日本人の老後が、介護が贅沢品のアメリカ同様、ビジネスに呑まれてゆく兆候なのだ。

◆売り渡してはならないもの

 売られつつあるのは介護だけではない。上の表に示したように、「民営化」「グローバル化」の名の下、日本人の命や国土保全に関わるものまで次々に値札が付けられている。

 こうした傾向は第二次安倍政権以降に加速した。経済財政諮問会議や規制改革推進会議では、財界出身の民間議員が立法プロセスに介入し、財界=投資家が望む「日本売り」政策が次々に実現している。

関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン