外資系なら自社で外国人を雇ってから日本の介護現場に派遣するなどの抜け道もある。ただでさえ他の職種に比べ平均10万円安い介護士の月給が、安価な外国人介護士との価格競争で引き下げられれば、投資家が喜ぶ「人件費削減」に好都合だからだ。
さらに今後は、介護保険適用外サービスが解禁され、保険適用のサービスと組み合わせて提供する「混合介護」も進んでいく。
保険外のサービスもできるとなると、事業所はサービスの内容、価格を自由に決められるため「利用料アップ」の道が開かれる。富裕層向けの保険外サービスばかりがメニューに増え、そうでない利用者は蚊帳の外に置かれることになるだろう。
介護が必要になったとき、ふと地域を見渡すと、富裕層向けの介護施設ばかりになっている光景を想像してほしい。それは日本人の老後が、介護が贅沢品のアメリカ同様、ビジネスに呑まれてゆく兆候なのだ。
◆売り渡してはならないもの
売られつつあるのは介護だけではない。上の表に示したように、「民営化」「グローバル化」の名の下、日本人の命や国土保全に関わるものまで次々に値札が付けられている。
こうした傾向は第二次安倍政権以降に加速した。経済財政諮問会議や規制改革推進会議では、財界出身の民間議員が立法プロセスに介入し、財界=投資家が望む「日本売り」政策が次々に実現している。