看板を変えただけではない。同大学は公立化を機にカリキュラムを大幅刷新した。授業では、地元のシャッター通り商店街や農村に足を運び、商店主や農業法人の話に耳を傾ける。学生たちはフィールドワークを通して、この土地でしかできない貴重な体験を重ねてゆく。
同大学2回生で、鳥取県出身の竹内就人さん(20才)は、高校の先生に勧められてこの大学を受験した。
「東京や大阪の大都会は自分の性格に合わない気がしたので、地元からそう遠くなく、地域での実践を通じて経済や経営を学べるこの大学に興味を持ちました。福知山市は京都といっても中心地から外れた場所にあり、『都会で羽を伸ばして大学生活を楽しむぞ』という浮かれ気分で入学してきた同級生はいない。みんな根が真面目で一生懸命勉強するので、学ぶ環境は非常にいい。ぼく自身も『スタバはないけどスナバはある』と知事が発言した県の出身なので、すぐなじめました(笑い)。ここは学生と大学の先生や地域のかたがたとの距離が近いところがいちばんの魅力です」(竹内さん)
同じく2回生の石黒将太郎さん(19才)が入学を決めた最大の理由は学費だった。
「親に迷惑をかけたくなく、私立と比べて学費が安いことが大きな魅力でした。正直、何を学ぶかは後からついてきたことでした」(石黒さん)
入学後、家賃4万円のアパートに住みながら、授業で地域を歩いた。たくさんの住民と触れ合ううち、石黒さんのなかである思いが芽生えた。
「大学の授業では地域経営の基本と持続可能性を学び、それを社会で実践する方法を考えます。ぼくの地元の富山県も高齢化や過疎化の問題に直面しているので、ここで学んだことは地元に戻ってからも生かせるはずです。そのことに気がついてから、卒業後は故郷に戻って、地元に貢献したいと思うようになりました」(石黒さん)
福知山公立大のほかにも、2017年4月に公立化した長野大学は志願者が増加に転じ、2018年は首都圏からの入学者が17%に達した。2012年に公立化した公立鳥取環境大学も、首都圏からの入学者が目立つ。学生たちはそれぞれ自分に合った地域で、将来の夢を育んでいる。
※女性セブン2019年2月7日号