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2019.02.05 16:00  週刊ポスト

【著者に訊け】森詠氏 警察小説『総監特命 彷徨う警官3』

 自室で改めて声明文を読んでみた北郷の違和感や、個性豊かな部下たちの地道な捜査によって、昭和史有数の未解決事件は全く違う相貌を見せてゆく。そんな中、横浜では元総会屋のフリー記者〈石丸〉が謎の死を遂げ、彼が追っていたある特ダネを東洋新聞も取材中だったことが判明。その接点に浮かぶ〈原発複合体〉や〈日本刷新会議〉といった闇の存在がやがて7係の面々にまで魔の手を伸ばし始めるのである。

 本書では著者初の警察小説『横浜狼犬』シリーズの登場人物〈海道章〉が所轄側で北郷を出し抜くなど、エンタメ的趣向も満載。それでいて赤報隊事件ばかりか、背後に渦巻く陰謀や日米関係の歴史的暗部まで森氏は可視化しようとし、作者の身の安全が心配になるほどだ。

「私もここまで話が広がるとは思いませんでしたが、調べれば調べるほどブラックホールに吸い込まれるのが赤報隊事件。ちょうど本書を執筆中に、かつて北陸の原発誘致を手伝った極道が電力会社を脅した事件が発覚し、そうか、隠蔽したかった本筋はこっちかと。前年のチェルノブイリ事故で原発への逆風が吹く中、数千億単位の金が動く建設を力ずくで進めたい人間もいただろうと思います。

 結局、赤報隊事件にしろ『黒の機関』に書いたような戦後の闇が影を落とし、日本は今もアメリカの属国なんです。ただしその結論に至るには謀略史観ありきではなく、事実に基づいたノンフィクション的手法を北郷には取らせたかったし、オーウェルの『1984年』のような、次世代に警告を与えられるフィクションを今後もめざしていきたい」

 森氏は7係という装置を使って、今後も数々の時効の壁に挑む予定だという。この国の構造が変わらない以上、〈事件はいまも生きている〉からだ。

【プロフィール】もり・えい/1941年東京生まれ。東京外国語大学卒。週刊誌記者を経て、1977年にキャノン機関など占領期以来の日米の暗部を暴く『黒の機関』を発表。1982年『燃える波濤』で第1回日本冒険小説協会大賞、1994年、疎開先・那須での少年期を描いた自伝的小説『オサムの朝』で第10回坪田譲治文学賞。『日本封鎖 小説第三次世界大戦』『新編日本中国戦争』『新編日本朝鮮戦争』等の他、『横浜狼犬』『剣客相談人』シリーズなど警察小説、時代小説も人気。160cm、67kg、O型。

■構成/橋本紀子 ■撮影/国府田利光

※週刊ポスト2019年2月15・22日号

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