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明石市長の暴言の裏にメディアが作った「確証バイアス」の罠

辞職願を提出した泉市長

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人やトピックスをピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、市職員に暴言を吐き、物議を醸している兵庫県明石市の泉房穂市長を分析。

 * * *
「火付けてこい!今日、火付けて捕まってこい、お前。燃やしてしまえ! 燃やしてこい、今から建物、ふざけんな」

 衝撃的な音声が映像から流れてきた。怒りを露わに声を荒げ、暴言を吐いていたのは兵庫県明石市の元市長泉房穂氏だ。暴言を浴びせられたのは、明石駅前の国道の拡幅事業で交渉を担当する職員。聞いた瞬間、「このハゲー!」と叫んでいた豊田真由子元衆議院議員を思い出した。そしてこう思った。

「あぁ、またパワハラか…」

 職員らがボイスレコーダーを持ち込んでいたのだろう。だとすれば、暴言は度々行われていたと考えるのが筋だ。案の定、泉氏による感情的な言動により、度々、騒動が起きていたという報道が続々出てきた。やっぱり単なるパワハラなのかと先入観が芽生えてくる。暴言に耐えられなくなった職員が、マスコミを通じて泉氏の言動を糾弾しようとしたのか。そう思えてしまう。

 この時、報じられていた音声は、衝撃的なフレーズを強調するこの部分だけだ。そのため泉氏が行った謝罪会見では、先入観にそった情報ばかりが目についてしまう。「確証バイアス」という思考や判断のクセだ。

 暴言を認め「自分自身の発言は許されないものであり、深く反省しております」と唇を噛みしめ、深々と頭を下げた泉氏。だが肩には力が入って首をすくめ、視線を落とし、前を見る時は上目使い気味、どこかおびえた印象だ。弁解も言い訳もしなかったが、既にパワハラ市長という先入観が生じているだけに、強い者には巻かれ、弱い者には高圧的になりやすいタイプなのかと思えてくる。地元でないため、泉氏が市長として、どんな功績を上げてきたのかわからないという点も先入観を強くする。

 テレビの情報番組では、泉氏が国会議員だった当時の映像も流れた。国会で自信満々にはつらつと発言している様子は、会見での低姿勢と比べると「あぁやっぱり」という印象を強くさせるものだった。

 この時までは、メディアもネットも後追いするような記事ばかりで、反証するような情報は出ていなかった。

 

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