国内

日本でも起きていたカトリック神父の性虐待 実名告発の衝撃

神父による小児性虐待を告発した竹中勝美氏

 子供を対象にした性的嗜好のことを「ペドフェリア」と呼ぶ。日本国内において13歳未満の児童に対するわいせつ行為は強制わいせつ罪と定められており、性行為に対しては強制性交罪が適用される。子供を性の対象とすることは法的に明確に禁じられているにもかかわらず、被害者感情の問題や組織の事なかれ主義から実態が隠蔽されることが多く、それが逆に被害の蔓延を招くという極めて難しい現実がある。ノンフィクション作家・広野真嗣氏がレポートする。

 * * *
 日曜日のミサを終えた聖堂の控え室で、その白人神父は「従者」の当番に来ていた10歳の日本人少年の手を取った。神父は、身につけていた白い司祭服のポケットに、その手を突っ込ませた。ポケットには内袋はなく穴が空いているだけ、服の下には下着もつけていない。手が触れたのは膨張した神父自身だった。

「彼のものを直につかまされ、私も無言で手を動かしたんです。教会で育った子供にとって、神父様は絶対ですから」

 かつて1年間にわたって受け続けた小児性虐待(ペドフェリア)被害を告白したのは、現在62歳の竹中勝美氏だ。児童養護施設「東京サレジオ学園」(東京・小平)出身のカトリック信徒である。施設はイタリアに本拠地を置く修道会「サレジオ会」が運営しており、神父はかつて園長を務めたドイツ人で、名をトマス・マンハルドといった。竹中氏は、カトリック神父による児童性虐待被害を実名で名乗り出た、初めての日本人である。

 性的虐待によって心の傷を抱えた竹中氏だったが、その後一連の記憶を20年以上にわたって心の中に無自覚にしまい込み、あたかも「ないもの」のようにして暮らした。ところが30歳を過ぎて間もなく起きたフラッシュバックが起き、鮮明な記憶を取り戻した。時間をかけて心を整理し、「ほかにも苦しんでいる人がいるはず」と意を決して、自身の経験を教会に申し立てたという。

 これに対して日本の教会──修道会、教区あるいはカトリック中央協議会──は、竹中氏への体験を否定こそしなかったものの、結局、実態解明のための調査をすることはなく、「沈黙」を守ったまま。そして再び18年間が過ぎた。

 昨年末、この問題を取材する中で私は竹中氏の存在に突き当たった。私との対話を続ける中で竹中氏は、クリスマスの深夜ミサで神に祈り、改めて実名で名乗り出る決心を固めたという。

「ミサの間、ずっと神に問い続けました。性虐待を告発する1人の信者と、それを隠蔽する教会。神の正義はどちらにあり、何が神の御心に適う行動なのでしょうか。祈りの中で神は私とともにあると確信し、この問題から目をそらさず立ち向かうことにしました」

 インタビューは虐待当時の写真や当時の施設や部屋の見取り図、18年前の教会との往復書簡を示しながら、計5時間半に及んだ。その全容は『文藝春秋』3月号で詳報した拙稿をお読みいただければ幸いだが、そこで語られたのは、マンハルド神父が行なった耳を塞ぎたくなるような性的虐待の手口である。

◆人生を狂わせる犯罪行為

 禁欲を誓ったはずのカトリック神父が少年や少女に性行為を強いる小児性愛(ペドフェリア)犯罪は、海外で大規模な被害報告が続いている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

岸信夫元防衛相の長男・信千世氏(写真/共同通信社)
《世襲候補の“裏金相続”問題》岸信夫元防衛相の長男・信千世氏、二階俊博元幹事長の後継者 次期総選挙にも大きな影響
週刊ポスト
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
女優業のほか、YouTuberとしての活動にも精を出す川口春奈
女優業快調の川口春奈はYouTubeも大人気 「一人ラーメン」に続いて「サウナ動画」もヒット
週刊ポスト
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
女性セブン
今回のドラマは篠原涼子にとっても正念場だという(時事通信フォト)
【代表作が10年近く出ていない】篠原涼子、新ドラマ『イップス』の現場は和気藹々でも心中は…評価次第では今後のオファーに影響も
週刊ポスト
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
韓国2泊3日プチ整形&エステ旅をレポート
【韓国2泊3日プチ整形&エステ旅】54才主婦が体験「たるみ、しわ、ほうれい線」肌トラブルは解消されたのか
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン