こうして片づけのフローへと突入。ただし、“こんまり”が手を動かすことは少なく、また多くを語ることもない。やることはたった1つだけ、それが「ときめきの魔法」の伝授。魔法と語られるが時間と表現したほうが正しいだろう。片づけたいモノと向かい合う時間の使い方を相談者に提供する。

 例えば、服の場合。クローゼットから全て出す。一枚一枚、服を手に取り対話。その服にときめけば残し、ときめかなければ処分する。全て、このやり方で片づけていく。

 今までの達人は、自らが先頭を切っていた。相談者の横目にガツガツとモノを捨てる。「片付いている方が仕事の効率が上がる」といった理論もかましつつ。時に「100円ショップの商品だけで棚を作りました~」なんてテクニックも披露する。

“こんまり”の片づけは、その真逆をいく感情論。ときめきといった心の動きに基づき、仕上げていく。捨てるモノに「『ありがとう』を伝えて!」なんてアドバイスも。当初、対話に時間がかかっていた相談者も中盤に差し掛かる頃にはスピードアップ。ときめく/ときめかない、自身の価値基準が洗練されていく。“こんまり”の片づけは、モノと同時に頭の中も整頓。雑念を取り払う修行のようだ。

 しかし、処分に時間がかかるモノもある。例えば、家族の思い出が詰まったグッズ。感情が込められていると厄介だ。誰しも泣きながら捨てる。正直「泣くなら捨てなきゃいいじゃん」と思ったが、ときめきが消えたのならば仕方がない。「これはおばあちゃんが買ってくれたの」と語りつつ……、サヨナラを告げる。

『KonMari~人生がときめく片づけの魔法~』、相談者の背景に時間が割かれていた。捨てられないモノに込められたエピソードを披露すれば、必然と露出するドキュメンタリー的な要素。意外なほどに人間ドラマとなっていた。

 番組中、“こんまり”はストーリーテラーに徹する。そもそも映っている時間も短いのだ。各人のドラマを紹介するといった意味では『世にも奇妙な物語』のタモリと同じポジションである。

「“こんまり”はタモリだ!」なんてオチに仕立てたいわけでない。しかし、ある部分で“こんまり”は確かにタモリ的なんだ。熱くなることもはない、常に一歩下がり現象を捉える、そして現実感がなくキャラクターっぽい。あと、密室でおこなわれる芸で世の中に現れたことでも同じだよなぁ。片づけは密室芸……、長くなりそうなのでここらへんで控えます。

●ヨシムラヒロム/1986年生まれ、東京出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。イラストレーター、コラムニスト、中野区観光大使。五反田のコワーキングスペースpaoで週1度開かれるイベント「微学校」の校長としても活動中。テレビっ子として育ち、ネットテレビっ子に成長した。著書に『美大生図鑑』(飛鳥新社)。

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