また米朝会談が成功を収めれば、“トップ会談でないと問題は解決しない”という機運が盛り上がる可能性もある。私は早ければ数か月以内に日本は北朝鮮と正式な政府間交渉を始めると見ています。交渉過程でトップ会談に向けた条件や環境が整えば、安倍首相の“年内電撃訪朝”の可能性もゼロではないでしょう。
最大の問題は首相が訪朝するからには手ブラでは帰れない点。田中さんと金田さんの帰国だけでは日本世論が納得しないことは政府も承知しています。横田めぐみさんを始めとした残る政府認定拉致被害者12人の生存確認と帰国について、首相が金正恩にどこまで迫れるかに懸かっています。
【PROFILE】ごみ・ようじ/東京新聞編集委員・ジャーナリスト。1983年東京新聞入社。1999年からソウル支局、2003年から中国総局勤務。主に朝鮮半島情勢を取材し、金正日死亡直後(2012年1月)に出版された『父・金正日と私 金正男独占告白』が大きな話題となった。近著に『金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて』がある。
※週刊ポスト2019年3月8日号