「ラッシュを観た時、涙が流れました。今井先生が『どうしたの?』と聞いてこられたのですが、とにかく自分の芝居が気に入らなくて。ここに映っているのは『ひめゆり』の子じゃないと思えたんです。
すると先生は、『一週間あげるから何が気に入らないか考えていらっしゃい』って。その時は『はい』と答えましたが、大変なことなんですよね。一週間後に撮り直すためにセットもそのままにしないといけませんし、相手の俳優さんもいますし。
当時はそんなことも知らずに家に帰って鏡を見たら、『太っている』と思いました。当時の沖縄の子たちは食べ物もなくてみんな骨と皮になっていたわけですから。それで絶食をしました。
兄の友達がお醤油を飲んで体を壊して兵役を免れたという話を聞いていたので、お醤油を水で薄めて飲んだんです。あとは一週間、何も食べませんでした。当時の沖縄の子に近づくにはそれしか方法がなかったんです。
それで一週間後に同じシーンを撮ったら、先生が『眼の光が良かった』と言ってくださって。俳優というのは演技も必要ですが、自分の身体が何かを語るんだと肌で感じましたね」
養成所卒業後は劇団新人会に入団。同時に日活と契約を結ぶ。