脚本を書くにあたり雑誌『ナショナルジオグラフィック』や専門書を監督が持ち込んで、“月に生命が介在する余地があるか考えましょう”と言われて、これはすごいものに手を出してしまったぞ、と最初は怯みました(笑い)。
途中で挫けそうになりましたが、藤子先生のアシスタントをされていたむぎわらしんたろう先生が、「これまでも何度か映画で月に行こうと思ったけれど毎回実現しなかった。ぼくはその意味で、何度も月面着陸に失敗しているんです。でも辻村さんが月面着陸をしてくれてうれしい」と言ってくださった。
これからも長く続くドラえもん映画で月へ行ける機会はきっと1回きり。「その貴重な機会をもらっちゃっていいのかな」という気持ちと、「1回しかないなら自分が行きたい」という気持ちで、月を目指したんです。
登場人物の設定は、不思議な力を持つ子供たちならば月にいられるかも、と思い、超能力を持つ「エスパル」を作りました。かぐや姫伝説も絶対に絡めたかったので、エスパルの中にかぐや姫になりうる女の子として広瀬さん演じるルナを登場させました。
広瀬:ルナはエスパルのお姉さんであり、お母さんのような存在なので、みんなを包み込むようなやさしい存在でいることを意識しました。
普段は妹のすず(広瀬すず・20才)に対して“おせっかいお母さん”くらいな感じなのですが(笑い)、ルナはちょっと“姉モード”を入れています。
【広瀬アリス(ひろせ・ありす)】
1994年生まれ。静岡県出身。2008年映画『死にぞこないの青』で女優デビュ-。以降、連続テレビ小説『わろてんか』や映画『新宿スワンII』、『旅猫リポート』、『銃』など数々の話題作に出演。ファッション誌『with』のレギュラーモデルも務める。2020年には映画『AI崩壊』の公開が控える。
【辻村深月(つじむら・みづき)】
1980年生まれ。山梨県出身。千葉大学教育学部卒業。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞し、デビュー。2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞を受賞。2018年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞の大賞を受賞。
撮影/田中智久
※女性セブン2019年3月14日号