矢部:ダルちゃんを見下して上から目線で侮辱するスギタさんなどは、僕も読んで思うところがありました。
はるな:嫌なやつだと思いましたか?
矢部:後輩に偉そうにしゃべってしまうなど、自分の中にもスギタさんみたいな傾向はあるなって。先輩がスギタさん、僕がダルちゃんみたいな状態になっていた何分後かには、僕がスギタさんで後輩がダルちゃんになるとか。
はるな:私もスギタさんは「属性」ではなく、「状態」として描いたんです。あらゆる人にこうなる可能性はあって、自分も含めて、無意識にやっているというのはわりとよくあると思います。
矢部:みなさんそうやって、自分に反映させて読むんじゃないでしょうか。
はるな:絶対に反映させたくないという人もいると思いますよ。矢部さんのように自分にもこういうところがあったかもしれない、と考える人は誠実で心が強いということだと思う。自分と向き合って、負の面も受け入れられる矢部さんはやっぱりすてきです。
【プロフィール】
◆やべ・たろう/1977年生まれ。お笑いコンビ・カラテカのボケ担当。芸人としてだけでなく、舞台やドラマ、映画で俳優としても活躍している。コミックエッセイ『大家さんと僕』を2017年に刊行、その温かい作風が老若男女を問わず人気となり累計76万部を越える大ヒットに。同作で第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。
◆はるな・れもん/1983年生まれ。漫画家。2010年に宝塚ファンの日常を描いた『ZUCCA×ZUCA』(講談社、全10巻)でデビュー。他に『れもん、よむもん!』『れもん、うむもん!―そしてママになる―』(新潮社)等。資生堂「ウェブ花椿」での連載マンガを単行本化した『ダルちゃん』(全2巻、小学館)が累計10万部のヒット、この度、第23回手塚治虫文化賞マンガ大賞にノミネートされた。
●取材・構成/渡部美也