8年前、「100分deで名著」(Eテレ)という番組にコメンテーターとして出演した。緩和ケア病棟の患者さんたちが、がん患者という状況に縛られず、自由に自分らしく生きようとする姿は、アランの楽観主義に通じるものがあると話した。
「悲観主義は気分に属し、楽観主義は意志に属する」「あらゆる幸福は意志と抑制とによるものである」
たしかに悲観は気分に汚染されるが、楽観主義は意志の力でどうにでもなる。逆に言えば悲観的な状況を楽観的に考えることも意志の力でできるということだ。
しかし、今の世の中は悲観主義や不機嫌が、次から次へと伝染しているように思う。その伝染はSNSを介して、炎上という名のパンデミックを起こしている。
2017年の犯罪白書によると、65歳以上の刑法犯検挙人数は約4万7000人。20年間で3.7倍になっている。多いのは窃盗だが、傷害・暴行も約5800人と見逃せない。やはり20年間で17.4倍に増えた。キレるのは高齢者ばかりではない。人口比率でみると、ほとんどの世代で同じようにキレやすくなっている。
子どもたちの間ではいじめが蔓延し、大人社会ではパワハラやセクハラが横行している。不謹慎な写真や映像をSNSに上げる「バイトテロ」も、人手不足や低賃金などへの不満と、「どうせオレなんか」という不幸な自縛が見え隠れする。