「花園天皇という天皇がおられるんですけれども……誡太子書(太子を誡〈いまし〉むるの書)と呼ばれているんですが、この中で花園天皇は、まず徳を積むことの必要性、その徳を積むためには学問をしなければならないということを説いておられるわけです。その言葉にも非常に深い感銘を覚えます」(昭和57年3月15日)
先に紹介したような言葉が連ねられている同書について、「非常に深い感銘を覚えます」と言い切っておられる。これは、殿下がご自身をいかに厳しく律しようとされているかを、如実に示す事実だろう。
殿下は後年、50歳のお誕生日を迎えられる時の記者会見でも、再びこの書に触れておられた(平成22年2月19日)。
◆かつてなかったスケールのご活躍
皇太子殿下は、今上陛下が追い求めてこられた人々に寄り添う「能動的」な象徴天皇像を、しっかりと継承されるご決意でいらっしゃる。過去の天皇の歩みに学びながら、憲法が求める「国民統合の象徴」としての役割を全身全霊で果たそうとされているのだ。
そのことは昨年のお誕生日に際しての記者会見でも、次のようにお述べになっていた。
「今後とも、両陛下の御公務に取り組まれる御姿勢やお心構え、なさりようを含め、そのお姿をしっかりと心に刻み、今後私自身が活動していくのに当たって、常に心にとどめ、自己の研鑽に励みつつ、務めに取り組んでまいりたいと思います」(平成30年2月21日)
一方、皇太子殿下ならではの新しいお務めも今後、拡大していくだろう。たとえば「世界の水問題」へのお取り組みだ。殿下はすでに国連「水と衛生に関する諮問委員会」名誉総裁をお務めになるなど、この方面での貢献で国際的な注目を集めておられる。第8回世界水フォーラム「水と災害」ハイレベルパネルでの基調講演では眼前の危機への警鐘を鳴らされた。